ウェイト版タロット、大アルカナの死・死神の正位置の意味について解説します。
(2023/08/14改定)
解説動画
大アルカナ 死神の意味・概要
死神 図柄の解説
ヨハネ黙示録に描かれている「第四の騎士」が描かれています。どれほどの権力者でも死からは逃れることができず、(横たわる皇帝)愛も死を超克するものではなく、生産したものは必ず死を迎えます。(死神の前で気を失う女帝)。宗教は自分に絶対に訪れる「死」を受け入れ、正面から向き合うこと行為であり(死の前で手を合わせて膝まづく法王)、
今という瞬間を無邪気に愛するものだけが、「死」すらも祝福することができます(死神に花を捧げる「愚者」と同じような服を着た子供)。
一見不吉なこのカードですが、シンプルに「終わり」を意味するカードです。旗を掲げる気高く、穏やかな「死神」は、絶対に訪れる終焉にたいして、あなたがどういった態度をとるのか、問いかけているのではないでしょうか。
キーワード
終焉・再生(逆位置の場合)
死神の正位置の一般的な意味
すべてのものに必ず「終わり」は訪れます。あなたも、これまでたくさんの「終わり」を通過してきたはずです。「終わり」を受け入れた時、人は「今」という瞬間が退屈な直線の一点ではなく、二度と戻ることのないかけがえのない一点だと知ることができます。死神のカードは、「終わり」・「終了」を暗示します。しかし、同時に終了することで次がはじまることもまた暗示しています。
状況別の意味
仕事に関する意味
- 現在のプロジェクトの終了
- 取り組んでいることを終わらせる必要がある
- 退職・転職のタイミングがきている
恋愛に関する意味
- 現在の関係が終了を迎える
- 突然の別れが訪れる
- 相手への思いを断ち切ることになる
結婚・家庭に関する意味
- 現在の状況が何らかの形で終わりを迎える
- 長く続いていた問題が終わる
- 家族として別の段階に進んでいく
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カード概要
キーワード
終焉・再生
カードの説明
ぎょっとするカードの1枚です。死を強く暗示する骸骨が描かれています。マルセイユ版とウェイト版では大きく絵柄が変わっています。
マルセイユ板では、「死神」は死体累々の上で鎌を振るう「刈り取る者」として描かれていますが、ウェイト版の「死神」には、「向き合う者」です。
よく見ると、このカードには、他のカードで登場する者がたくさん出てきます。
足元に王冠と笏を手放してしまった「皇帝」が横たわっており、「力」や「女帝」のような柔らかい衣装をまとった女性は気を失ったように崩れ込んでいます。「法王」と子供だけが、死に向き合い、そして、尊いものに接したかのように手を合わせています。そして彼の背後には船と、「女教皇」のような止まった水、「女帝」の背景に会った流れる水、そしてこれから現れる「月」で描かれている2つの塔と「太陽」が描かれています。
このカードはその見た目、名前から「不吉」なカードとして捉えられることが多いですが、単なる「不吉」を表したいのであれば、これほど多くのモチーフを画面の中に描きこむ必要があったでしょうか?
「わたしは君の元を「必ず」訪れる。わたしは君の「絶対的」な運命だ。」
私事ですが、私は20代の終わりに、癌を患い、「五年生存率」という数字に直面しました。
結果として、私の病は癒え(再発していないかの定期検査は続けていますが)、病気前と変わらぬ生活を享受することができていますが、それまで、「死にたい」と思うことがあったにもかかわらず、その病気に直面するまで、私は「私の死」と向き合うことはありませんでした。
このカードでは、赤目の白馬や、鎧や、掲げた旗や紋章など、死神に纏わるものが、どの大アルカナよりも「現実的」に「リアル」に描かれています。馬一つとってもみても、「愚者」の犬、「戦車」を引くスフィンクスや、「力」のライオン、「太陽」の馬、など、他のカードで描かれているどの動物よりも写実的で、リアルに描かれており、(そもそも、このカードの馬以外に、目の色がはっきりわかる描写をされている動物の絵はありません)「死神」の着ている写実的な鎧に比べると、「戦車」の鎧はまるで玩具のようにリアリティに欠けます。
これほどまでに、「死神」がリアルに描かれているのは、(絵の中のモチーフが多く、死神を浮かび上がらせる必要があると言った技術的な問題もあるでしょうが)普段、意識していないにもかかわらず、必ず、彼が私たちに訪れるものであり、そして、絶対的なものであることを暗示しているのではないでしょうか。
「すべてのものに、いつか「私」は訪れる。「私」と君はどう向き合うのだ?」
「死」に際して、地上での権力・規範は全くの無力です。どれほどの権力者でも死からは逃れることができず、いかなる社会的な責任があったとしても、それは死のタイミングを選ぶ権利にはなりえません(横たわる皇帝)。
「命」とは、「死」と再生の連続であり、波打ち際の砂の城のように、一つの個体の中でも、毎日多くの細胞が死に(ヒトの場合、数にして毎日10%以上の細胞が死んでいると言われています)、その代わりに、新しい命や細胞が補われます。しかし、生が途絶えたとしても、死は絶対に訪れます(死神の前で気を失う女帝)。
自分に絶対に訪れる「死」を受け入れ、「与えられたもの」としての命に感謝することで、ようやく、人は死と正面から向き合うことができ(死の前で手を合わせて膝まづく法王)、
今という瞬間を無邪気に愛するものだけが、「死」すらも祝福することができます(死神に花を捧げる「愚者」と同じような服を着た子供)。
このカードは直接的には「命」の終わりを描いていますが、すべてのものには必ずいつか「終わり」が訪れます。
権力や成果にしがみつき、ともに滅びること、「死」に抗って生産し続けること、「死」に完全降伏すること、「死」すらも祝福すべき今として受け入れること。様々な姿勢をこのカードは見せてくれています。
繰り返しますが、もしもアーサー・ウェイトがこのカードを単なる不吉な「死」と捉えていたのであれば、小アルカナの剣の10のようなシンプルで判りやすい図柄にしたはずです。武器も持たず、ただ、旗を掲げる気高く、穏やかな「死神」は、絶対に訪れる終焉にたいして、あなたがどういった態度をとるのか、問いかけているのではないでしょうか。
正位置の死神「わたしの「恩寵」を受ける権利が君にはある。」
マザー・テレサの「死を待つ人々の家」は、貧しい人々が「尊厳」を取り戻し、「大切にされた」「生まれてきてよかった」ということを感じながら死を迎えるための施設です。『最高の人生の始め方』という、余命幾ばくもなくなった人がこれまでにやれなかったことを心の底から楽しむ映画が共感されたのは、誰しも、「ああ、生きててよかった。楽しかった!」と思って死にたいという願いがあるからではないでしょうか。
すべてのものに必ず「終わり」は訪れます。夏休みの終わり、卒業式、大切な人との「死別」、恋の終わりetc…あなたも、これまでたくさんの「終わり」を通過してきたはずです。
カードの説明にも述べた通り、「死神」のカードは、大アルカナの要素が全部入り込んでるんじゃないかというぐらい、細々としたモチーフがたくさん描かれています。そのたくさんのモチーフが並ぶ様は、まるで「走馬灯」のようにも見えます。
「わたしは必ず、君の元を訪れる。君に出来るのは、わたしから逃げ回ることだけなのか?」
「終わり」は必ずすべてのものに訪れます。未だ、永遠に続いた繁栄はなく、出会ったものは絶対に別れる運命にあり、生まれたばかりの赤ちゃんはその瞬間から将来の死を決定されています。しかもその瞬間は選ぶことができません。
「わたしが必ず来ることを、君は今知った。そしてその時から君の「今」は輝き出すのだ」
「終わり」を受け入れた時、人は「今」という瞬間が退屈な直線の一点ではなく、二度と戻ることのないかけがえのない一点だと知ることができます。死神のカードは、「終わり」を知ることで輝き出す「今」という刹那の時間を教えてくれているのではないでしょうか。
このカードからのアドバイス
一般的なアドバイス
「終焉」「衰退」を受け入れて、「成長」・「再生」の道を歩みだしましょう。
私たちはいつも、右肩あがりの成長を期待します。去年より、昨日より、成長することがいいことで、停止すること、終わることは悪いことだと無意識に考えています。
しかし、日が沈むから、私たちは「眠り」で回復し、また夜明けに歩み出すことができるのです。
死ぬ細胞があるから、新しい細胞がその場所を埋めることができるのです。
あなたが直面している問題は、ひょっとしたら今、成長や変化が止まってしまったように見えるかもしれません。結果が出なくて焦っているかもしれません。
結果の出ないこと、成長しないことは、「その道ではない」ことや、「新しいことを始めること」を教えてくれているのかもしれません。
「終焉」「衰退」を過剰に恐れず、「成長」と同じ、単なる「結果」として受け入れましょう。
結果から目を背けることではなく、受け入れることで、次の一歩を踏み出していきましょう。
恋愛向けのアドバイス
「終わってしまうこと」「離れてしまうこと」への恐怖を手放しましょう。
このカードが即、あなたの関係の終了や、別れを暗示するわけではありません。(と、私は思います。)
しかし、あなたの中で「終わってしまうこと」「離れてしまうこと」に異常な恐怖があるのではないかと死神は指摘しています。
人が別れが辛いのは、寂しさや、やるせなさのせいだけではありません。
「自分に価値がなくなってしまうのではないか」という怖れもその原因です。
ウェイト版の死神のカードをもう一度いてみましょう。「生産」する女帝は気を失い、「権威」やこれまで積み上げたものを象徴する「皇帝」は王冠や笏を投げ出して地に伏せています。
一つの関係が終わるとき、あなたは気持ちだけではなく「○○の恋人」「○○のパートナー」と言った肩書きを失います。また、片思いであれば、「恋をしている」状態を失います。
「確かに、「わたし」が終わらせてしまうものもある。しかし、君の価値はそれだけではないだろう?」
あなたの関係が終わってしまっても、あなたの心の尊さ(法王)や、生まれたままのあなたの価値(子供)は決して失われません。皇帝の権威は、交換可能なものです。女帝は気を失っているだけなので、死神が去れば、またその意識を取り戻すでしょう。たとえどれほど辛い思いをしても、どれほど寂しくても、将来が不安でも、あなたの回復不可能なものは一切失われません。
気高く穏やかな死神は、あなたが「別れ」や「離別」を恐れすぎないように語りかけて今す。
お仕事・転機に向けてのアドバイス
「やめる」勇気を持ちましょう。
あなたは今、キャリアアップや待遇の改善を目指して、何かに取り組んでいるかもしれません。
新しいことを始めること、頑張ることはとてもいいことです。しかし、「始める勇気」と同様、 「終わらせる勇気」というのもとても大切なことです。あなたに今必要なことは、新しいことを必死に始めることではなく、勇気を持って何かを終わらせることなのではないかと、死神は伝えています。
「停止」・「終了」はネガティブなイメージが伴うかもしれません。しかし、きちんと終わらせることで、大きな新しいものを始めることができるのです。「今」のあなたにとって不必要なものはないか、点検してみましょう。
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参考画像・文献
ウェイト版の図柄
By パメラ・コールマン・スミス Holly Voleyによる1909年版のスキャン画像。ファイルは http://www.sacred-texts.com/tarot/ より
マルセイユ版の図柄
By Jean Dodal (http://www.tarot-history.com/Jean-Dodal/) [Public domain], via Wikimedia Commonsalign=”aligncenter”
参考文献
R.レイン「好き? 好き? 大好き?」
参考画像
ウェイト版の小アルカナの剣の10
単に、苦痛や、荒廃、敗北とそのあとの再生可能性といった、わかりやすいものを暗示するのであれば、ウェイトはこのようなシンプルな図柄にしたのではないでしょうか。
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