ウェイト版タロット、大アルカナの吊るされた男の正位置の意味について解説します。
(2023/08/14改定)
解説動画
大アルカナ 吊るされた男の意味・概要
吊るされた男 図柄の解説
一人の男が逆さまに吊るされている絵です。男の表情は穏やかで、後光のようなものが描かれています。なぜ、彼はこのような穏やかな表情をしているのでしょうか。
北欧神話のオーディンは、叡智を得るために、片目を失い、ルーン文字の解読方法を得るためにユグドラシルにグングニルに貫かれたまま9日間吊るされました。何かを誰かからもらうことばかりを追い求める人は、自分が何かのコストを払うことを「犠牲」であると感じます。しかし、自分の決めた道に身を投じることは、自分の命の炎を輝かせることであり、最高善を求め続ける魂にとっての最高の幸福です。
「犠牲」というフィルターを取り払い、「奉仕」の中に生きることを吊るされた男は教えてくれています。
キーワード
試練・修練
吊るされた男:一般的な意味
試練・修練というキーワードをポジティブに解釈します。吊るされた男が体現しているのは、自らの任を心から受け入れて、それに全身全霊を投じる奉仕の姿です。我慢や忍耐の美徳ではなく、奉仕による高いレベルでの学びを体現しています。正位置の吊るされた男は今は修練・試練の時でそれを乗り越えることでレベルアップしていけることを示唆しています。
状況別の意味
仕事に関する意味
- 時間はかかるが問題解決をすることができる
- 状況を打破するためには、努力や忍耐が求められる
- 粘り強く取り組むことで状況がよくなっていく
恋愛に関する意味
- 時間はかかるが、ゴールインまで育てていける関係性
- じっくりと時間をかけて取り組むことによって問題は解決できる
- 毎日の積み重ねがお互いの信頼や幸せにつながっていく
結婚・家庭に関する意味
- 時間をかけて関係を作っていく姿勢が大切
- 相手との信頼関係をコツコツと作っていくことが大切
- 時間はかかるが着実に進展していく関係
意味一覧にもどる
カード概要
キーワード
試練、奉仕
カードの説明
一人の男が逆さまに吊るされている絵です。マルセイユ版とウェイト版では、男のポーズが鏡像になっており、また、マルセイユ版では2本の木の間に男は吊るされているのに対して、ウェイト版ではT字に組まれた木に沿って吊るされています。
マルセイユ版では「力」と「死神」の間に来るカードでしたが、ウェイト版では「正義」と「死神」の間に改められました。
古いカードでは、彼はユダとみなされることもあることから、「正義」と「死」の間に持ってこられたこのカードは何かの罰を受けている姿だと捉えらえることもできるかもしれません。
しかし、男の表情は穏やかで、ウェイト版では後光のようなものが描かれています。なぜ、彼はこのような穏やかな表情をしているのでしょうか。
「信じている、いや、わかっているんだ。僕がすべてを手に入れる方法を」
北欧神話のオーディンは、叡智を得るために、片目を失い、ルーン文字の解読方法を得るためにユグドラシルにグングニルに貫かれたまま9日間吊るされました。ウェイト版の吊るされた男は、ユグドラシルに吊るされるオーディンを寓意していると言われています。
「犠牲じゃあない。奉仕であり修練さ。もし、君が僕を「助けたい」と思うなら放っておいてほしい。」
被害者意識からこの状態を読み取ってしまうと、「やむなく」世界樹に体を吊るし、貧乏くじを引いたということになるでしょう。しかし、このカードは、「決意」「判断」の「正義」の次に来ています。吊るされた男は、自らの進む道を決め、そしてそれに全身全霊で持って身を投じている姿なのです。何かを誰かからもらうことばかりを追い求める人は、自分が何かのコストを払うことを「犠牲」であると感じます。しかし、自分の決めた道に身を投じることは、自分の命の炎を輝かせることであり、最高善を求め続ける魂にとっての最高の幸福です。
「犠牲」というフィルターを取り払い、「奉仕」の中に生きることを吊るされた男は教えてくれています。
正位置の吊るされた男「試練を受け入れてごらん。そうすれば君は何にだってなれる」
コスパという言葉が頻用されるようになって久しいですが、費用を拡大解釈して、時間や手間など金銭的コスト以外を考慮に入れると、「簡単に〜」や、「3日でわかる〜」といった、「コスパ」のいい方法論を提案する書籍やウェブサイトは山積しています。
もちろん、無理に問題を難しくしたり、「苦労してないやつはどこかで失敗するんだ!」といた、恨みがましい解釈をしたりする必要はないでしょう。しかし、「何が何でも絶対に損をしたくない!」「一番楽な方法がわかるまではやらない!」という自分がそれに賭けることを忌避しすぎる姿勢は、あなたを本当の命の喜びから、遠ざけるかもしれません。
「僕は我慢しているんじゃない。奉仕しているんだ。」
もし、このカードが不断の努力の美徳を謳うカードであれば、もっと苦痛に満ちた表情か、あるいは逆に労働の悦びのようなものに没入した表情で描かれているでしょう。
しかし、吊るされた男は非常に穏やかな表情をしています。
彼が体現しているのは、積極よりも受動の姿勢、自らの任を心から受け入れて、それに全霊をもって、しかも誰に鼓舞することもなく、ただ身を投じる奉仕の姿勢です。
「投錨するんだ。捧げるんだ。君の志に、君の魂に君を奉仕するんだ。」
魂は最高善を求める本質を持っていると、ギリシャの哲学者たちは定義しました。
自らの目的に奉仕することの穏やかな悦びをしらない人は、彼の行為は途方もない我慢か、愚行にみえるでしょう。しかし、我を忘れるぐらい何かに打ち込んでいたとき、振り返れば、そのときあなたは幸せを感じていたのではないでしょうか。
繰り返しますが吊るされた男があなたに伝えたいのは、我慢や忍耐の美徳ではありません。奉仕による高いレベルでの学び、人が人の枠組みを超えていく学びの世界にあなたを招待しています。
このカードからのアドバイス
一般的なアドバイス
おそれず、試練を受け入れましょう。あなたはひょっとしたらこれから起こりうることや、迎える未来に漠然とした不安を感じているかもしれません。自分はこれから待ち受けていることを乗り越えられるだろうか。自分の先行きに困難が来ないでほしい。困難な道は歩きたくない。そんな思いを抱えているかもしれません。しかし、起こることを心配して抵抗して怯えず、ただ淡々と受け入れれば、あなたは進みたい道に進むことができます。
我慢ではありません。根性でもありません。もっとフラットに、ただ、あなたの道を進みましょう。
この経験はいつの間にか、あなたを次のステージへと連れて行ってくれるはずです。
恋愛向けのアドバイス
自分の心の望みに身をゆだねましょう。
あなたの恋愛に関する悩みは、ほかならぬ、あなた自身がもたらしたものではありませんか?
これは、あなたの非を責めているわけではありません。
例え、相手がどれほどあなたにとって理不尽に思える行為や釣れない態度を取っているとしても、それに対して反応しているのは、ほかならないあなたの心です。
あなたが恋愛の事を考えながらカードを引いたのは、きっと恋愛に関する悩みや気にかかることがあるからでしょう。
しかし、結局のところ、どんな恋愛であっても、あなたがあなたをどうするのか、問われ続けていることなのです。
吊るされた男はまっすぐに、深みに頭を突っ込んでいます。
困難そのものに意識を置くのではなく、困難な状況であっても、「あなたが何を望むのか」の本質に投錨しましょう。
あなたの本当の目的は、あなたが幸せであることではないでしょうか?そしてそれは、あなた自身があなたにいますぐ貢献できることなのではないでしょうか。
お仕事・転機に向けてのアドバイス
「犠牲」ではなく「奉仕」の姿勢で臨みましょう。
ワークライフバランスが叫ばれて久しく、また、労働環境の劣悪さが問題に成っている職場、職種も多々あります。
あなたがカードを引こうと思った原因も、労働環境や仕事の内容への不満が根底にあるのではないでしょうか。
基本的に、「何かをさせられている」状態を人は嫌います。
「我慢」「忍耐」をいくら美徳とされても、やはり本質的にはそれは窮屈なことです。
ですが、それと同時に人は自分が世界や社会に貢献したい願望も持っています。
「何のために生まれて 何のために生きるのか わからないまま終わる そんなのは嫌だ」
というアンパンマンのテーマの2番の歌詞が大人になると胸に突き刺さるのは、自我を持ち、他の人と違う「この私」である私たちが、自分の心から望むものに貢献したい、誰かから感謝されたいと言った抗いがたい願望を持っているからです。
「誰か」に言われて、「世間」の目を気にして「我慢」するのではなく、「あなたが」進んで、「あなたの心の声」に導かれるまま、あなたの仕事や、あなたの目的に「奉仕」しましょう。あなたが命を輝かせる時、世界もキラキラ光輝き始めるはずです。そして、それは、自分の目的に奉仕することを選んだ「吊るされた男」だけが知っている光なのです。
インデックスページに戻る
参考画像・文献
ウェイト版の図柄
By パメラ・コールマン・スミス Holly Voleyによる1909年版のスキャン画像。ファイルは http://www.sacred-texts.com/tarot/ より
マルセイユ版の図柄
By Jean Dodal (http://www.tarot-history.com/Jean-Dodal/) [Public domain], via Wikimedia Commons
align=”aligncenter”
コメントを残す