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第35話:小アルカナを学ぼう その10 9のカード

むぎのタロット講座

第35話:小アルカナを学ぼう その10 9のカード

このお話で学べること

各カードの9のカードの意味を理解しよう

34 9のカードを学ぼう

むぎのタロットのワンドの9です
むぎのタロットのカップの9です
むぎのタロットのソードの9です
むぎのタロットのペンタクルの9です
ホップ
9のカードは、正直かなりスートによって個性がでてるね。
ワンドとソード、フラグたちすぎじゃない?
むぎ
9のカードは第9セフィラのイェソドに対応してる。イェソドは基礎を意味する。10のカードとセットでみると、ひょっとしたら9のカードはわかりやすいかもしれないね。
セフィロトの樹
ホップ
基礎…ねぇ、カップやペンタクルはともかく、なんかワンドやソードはぴんとこないんだけど…
9のカードについて、いつものなんとかさんは何て言ってるの?
むぎ
ついに1文字も覚えなくなったね。エリファス・レヴィはこんな風に述べてるよ

トリスメギストスの燈火は現在、過去、そして未来を照らし、男性の意識を赤裸に示し、女性の真理の襞を照らし出す。燈火は三重の炎で燃え、外套は三つ重ねで、そして杖は三つの部分にわかれる。
九という数は神の反射の数である、すなわち神という抽象的偉力を表わすが、同時にまた信仰における行き過ぎ、そこから発する迷信と偶像崇拝をも表わす。
それ故ヘルメスはこれを秘法伝受の数字としたのであり、それというのも秘法伝受者は迷信の上に君臨し、また迷信を利用して君臨し、そして外套にくるまり、燈火で照らされ、杖を助けに、暗闇の中を独りで歩くことが出来るからである。
理性はすべての人間に授けられているが、しかしすべての者がその使い方を心得ているとは限らない。身につけるべきものは学問である。自由はすべての者に差し出されている、しかしすべての者が自由になりうるとは限らない。手に入れるべきものは権利である。力は万人のためにある、しかし万人がそれに支えられる術を心得ているとは限らない。確保すべきものは実力である。
人文書院 エリファス・レヴィ「高等魔術の教理と祭儀」ー教理篇ーより

ホップ
はい。安定の何いってるかわからない
…なんだけど、わかんないなりになんか後半この人めずらしくいいこと言ってない?
むぎ
そうだねぇ。この説明で僕が注目すべきなのは、
「九という数は神の反射」であり、「神であり、そこから発する迷信と偶像崇拝」ってとこだと思うんだ。
めちゃくちゃ乱暴に要約すると、「迷信が発生するには元となる信仰が必要であり、また、迷信から逆に真なる信仰が見える」ってことじゃないかなぁっておもうんだ。
この、反射っていう表現には洞窟のイドラのようなものも連想されるし、ヨハネ黙示録での…
ホップ
あ、うん。もう途中からまったくわかってないからゆっくり話して。
むぎ
そうだね。ちょっと丁寧にみていこうか。
ここの引用の前の部分で、レヴィはこんな風に書いてる

秘法伝受者とはトリスメギストスの燈火(ランプ)、アポロニウスの外套、それと族長の杖をさずけられる者である。
トリスメギストスの燈火とは、学問によって照らされた条理である。アポロニウスの外套とは、賢者を本能的流れから隔絶する完璧な自己把握である、そして族長の杖とは、「自然」の有する隠れた永続的偉力の援助である。
人文書院 エリファス・レヴィ「高等魔術の教理と祭儀」ー教理篇ーより

ホップ
トリスなんちゃらもアポロなんちゃらもよくわかんないけど…
ランプ、外套、杖ってまるで隠者みたいだね。
むぎ
そうだねぇ。ここの説明のイメージは大アルカナの隠者にもつながってるとおもうよ。
ホップ
そもそも、トリスなんとかさんと、アポロなんとかさんは何ものなの?
むぎ
トリスメギストスは正式にはヘルメス・トリスメギストス、「トリスメギストス=3倍偉大な」って意味らしいから、直訳すると「3倍偉大なヘルメス」だね。
ギリシャ神話のヘルメス神とエジプトのトート神っていうどちらも叡智を司る神が習合して、さらに後の実在の人物の伝説も加わってできあがった錬金術の祖だね。
彼が記した「錬金術大全」がみつかったことがルネサンス期に錬金術が研究されはじめたきっかけだって薔薇十字団は考えてるらしい。
ヘルメス思想っていうと、彼にあやかって、神秘主義のすべてを知り尽くそうとするそんな考え方をしめしたりするんだ。
そんなヘルメスの燈火は隠された世界の心理を照らし出すものなんじゃないかなぁと思うよ。
ホップ
アポロなんたらさんは?
むぎ
アポロニウスっていう人はいっぱいいるんだけど、ここで出てきてるアポロニウスは「ティアナのアポロニウス」だね。
新ピタゴラス学派の学者で古代の魔術師として知られてる。ピタゴラス学派は「世界の根元(=アルケー)」が数だって考えてた人たちだけど、新ピタゴラス学派はそこに神秘主義も加わって、現在のカバラとかのベースになった人たちだって僕は理解してるよ。
どうでもいいんだけど、このピタゴラス学派のwikipediaの後半の説明が的確で辛辣で僕は結構好きだよ。
ホップ
ちょっと繊細な問題に触れてる気がするからそれぐらいにしとこ
むぎ
一つの分野からだけじゃなくて、いろんな分野から事実を眺めるのって単純に楽しいとおもうんだけどね。
まぁアポロニウスに戻すと、このアポロニウスの外套っていうのは、レヴィの説明によると、「本能的流れ」から隔離するためのものっていってる。
つまり、誰から身を隠すかっていうと、他人じゃなくて、自分の本能なんだよね。
自分の本能という揺れ動き続けるものから自らを隔離し、真なる自己を知るための外套っていうふうに言いたいんじゃないかなって思うよ。
ホップ
それが今回の9とどうつながってくるの?
むぎ
これも、レヴィの言葉にヒントがあるね。
「9という数字は(中略)、神という概念の抽象的偉力をあらわすが、同時にまた信仰における行き過ぎ、そこから発する迷信と偶像崇拝をあらわす。」
「それゆえヘルメスはこれを秘法伝受者の数字としたのであり、それというのも秘法伝受者は迷信の上に君臨し、また迷信を利用して君臨し、そして外套にくるまり、燈火で照らされ、杖を助けに、暗闇の中を独りであるく」んだよ。
ホップ
やっぱりわかんないよ…?
むぎ
ヘルメスの燈火や、アポロニウスの外套の寓意もふまえて、もうちょっと丁寧にこの文章を読むよ。
3が三位一体=信仰対象である神そのものを表わすのは3のところで説明したよね。
そしてその3が3倍である9は「神の概念」だけではなく、その「反射」である「信仰による行き過ぎ」「迷信」「偶像崇拝」をあらわす。
「偶像」っていうのは信仰対象がないとあらわれないし、迷信も元となる信仰対象がないとあらわれない。
不信仰やあやまった信仰は「信仰」がなければ存在しない、つまり「信仰」の反射なんだよ。
ホップ
うおお。なんかそこはかとなくグノーシスだねぇ。
むぎ
そこはかとなくもなにも、がっつりグノーシスだね。
そして、レヴィによると「秘法伝受者」っていうのは「迷信」っていう「神の反射」の上に君臨して、それを利用するんだよ。
つまり、本来の「信仰」から派生した「迷信」を掲げながら、自らはそこから身を隠して杖とランプをもって歩くんだ。
ホップ
うええ…やっぱりよくわからない。どういうこと?
むぎ
ヨハネ黙示録でもね、神は一気に地上を滅ぼすことなく、まずは悪徳を蔓延らせる。それを信じなかったもの、信仰を捨てなかったものを選ぶためだね。
他にも神はヨブ記で善人であるヨブに苦難を押し付けたり、「試す」行為をやたらとする。
まぁそれは、ユダヤ教が苛烈な環境である砂漠でうまれた宗教で、民族的苦難が大きかったユダヤの民が「試されている僕たちこそ本物」っていう発想をもってしまったからかもしれないけどね。
むぎ
自然に満ち溢れてて水にも食糧にも困らなかった日本と、荒れ果てた砂漠とでは生まれてくる物は違いそうだよね。
ちょっと脱線したんだけど、「真なる者」は必ずそれから派生した「反射」をともなう。そして、その「反射」があるからこそ「真なる者」がわかるともいえるんだ。
ホップ
んーと…つまりはどういういこと?
むぎ
「9という数字は(中略)、神という概念の抽象的偉力をあらわすが、同時にまた信仰における行き過ぎ、そこから発する迷信と偶像崇拝をあらわす。」ってあるように、この9っていう数字は、完成に向けて一度必ず通らねばならない葛藤やそれに派生して出てくる問題を表わすんじゃないかって思うんだよ
最初から正解にたどりつくんじゃなくて、「じゃないもの」を知った方が、本当の真理には近づけるんじゃないかとおもうし、真理をとりまく「じゃないもの」が、真理にたどり着く者を選別する役割もはたすんじゃないかなぁと思うよ。
むぎ

34-1 9のカードの概要

各スートの9のカードは、第9セフィラのイェソドに対応しています。
セフィロトの樹
イェソドは、星としては「月」に。概念としては「基礎」に対応します。

しかし、それぞれのスートのカードをみると、基礎とは言い難いカードが多いようにかんじます。この9という数字をどう解釈すればいいのでしょうか?
エリファス・レヴィはこの9に対して以下のように説明をしています。

九という数は神の反射の数である、すなわち神という抽象的偉力を表わすが、同時にまた信仰における行き過ぎ、そこから発する迷信と偶像崇拝をも表わす。
それ故ヘルメスはこれを秘法伝受の数字としたのであり、それというのも秘法伝受者は迷信の上に君臨し、また迷信を利用して君臨し、そして外套にくるまり、燈火で照らされ、杖を助けに、暗闇の中を独りで歩くことが出来るからである。
理性はすべての人間に授けられているが、しかしすべての者がその使い方を心得ているとは限らない。身につけるべきものは学問である。自由はすべての者に差し出されている、しかしすべての者が自由になりうるとは限らない。手に入れるべきものは権利である。力は万人のためにある、しかし万人がそれに支えられる術を心得ているとは限らない。確保すべきものは実力である。
人文書院 エリファス・レヴィ「高等魔術の教理と祭儀」ー教理篇ーより

レヴィは、9は「神の反射の数」であると述べ、神の「抽象的偉力」のみならず、迷信や偶像崇拝をも表わすと示しています。
また、その後、「理性」だけでは使い方を心得ておらず「学問」が必要であり、「自由」だけでは「自由」はなり得ず、「権利」が必要といった形で、それぞれの概念の実現には、それを正しく行使するために手に入れるべきものが描かれています。
また、ヨハネ黙示録、ヨブ記など、聖書の中の様々な箇所で、神は「真なる信仰」を試すために偶像崇拝であったり、災厄であったりを人々にもたらします。
また、「悪魔」のような「不信仰」は信仰があるからこそ存在するものです。
これはグノーシス主義にもつながります。つまり、神の偉大さはその偉大さゆえに、迷信や偶像崇拝といった「反射」を生み出すのです。
そのため、各スートの9では、そのスートが完成するために現れる「葛藤」「反射的な出来事」が描かれます。
各スートの完成形は10のカードです。10のカードの「反射」としての要素の「9」として捉えることで各カードの本質が見えやすくなるのかなと思います。

34-2 ワンドの9

スート×番号のもつ意味
  • ワンドの意味:活動、アクション、動き、冒険、挑戦
  •   

  • 9(イェソド:基礎):各スートの完成までにおこる葛藤、問題

  • ホップ
    なんだか、楽しそうだった8までと違って、9は虎視淡々と何かを狙ってる感じがあるね。
    7まであんなに仲良しそうだったのに…
    むぎ
    ウェイトはこのカードに対してこんな説明を加えてるね

    一人の男が敵を待ち構えるように油断のない視線を向けながら、1本の杖に寄りかかっている。背後には8本の杖が矢来のように規則正しく立っている。
    魔女の家BOOKS アーサー・ウェイト「タロット公式テキストブック」より

    ホップ
    あ、これ寄りかかってるんだ。
    今からこれでぶん殴ろうとしてるんだとおもってた
    むぎ
    一応は「寄りかかってる」体みたいだねえ。ただ、正位置でこんなことも言ってる。

    これは抑圧されれた情況における強さをあらわす。攻撃されると、大胆に反撃するだろう。そして、その築いたものを見れば、彼は恐ろしい敵になりうることがわかる。こうした意味をもとに、可能な限りの付加をおこなうことができる。
    魔女の家BOOKS アーサー・ウェイト「タロット公式テキストブック」より

    ホップ
    あ、自分からは殴らないけど殴られたらいつでもやり返す準備はしてるんだね。
    むぎ
    そうなんだよね。あとは、「築いたもの」ってわざわざいってるところから、後ろに立ててるワンドは彼が用意したものなんだろうね。
    ワンドっていうのはエネルギーや活力や何かのスタートを意味するんだけど、バネが伸び上がる前にぎゅっと縮む必要があるように、このワンドは完成までに「抑圧」される必要があるんだ。
    「競争」のイメージをもつとわかりやすいかな?
    「もっと強くなろう」って思うのはより強い強敵があらわれたときなんだよ。
    叡智を司るソードは「強敵」に対して「相手をやっつける」ことに集中するんだけど、拡大のワンドは強敵がでてきたら「自分が大きくなること」で乗り越えようとするんだよね。
    なので、ワンドにおける「葛藤」っていうのは無限の拡大の前の抑圧をあらわしてるんじゃないかとおもうよ

    基本的な解釈

    一人の男が、1本の杖によりかかって立っています。彼の後ろには7本のワンドが彼を囲うようにたっています。
    ウェイトはこの絵に対してこのような説明を加えています。

    一人の男が敵を待ち構えるように油断のない視線を向けながら、1本の杖に寄りかかっている。背後には8本の杖が矢来のように規則正しく立っている。
    魔女の家BOOKS アーサー・ウェイト「タロット公式テキストブック」より

    また、正位置の解説では以下のように述べています。

    これは抑圧されれた情況における強さをあらわす。攻撃されると、大胆に反撃するだろう。そして、その築いたものを見れば、彼は恐ろしい敵になりうることがわかる。こうした意味をもとに、可能な限りの付加をおこなうことができる。
    魔女の家BOOKS アーサー・ウェイト「タロット公式テキストブック」より

    9のカードはそのスートが完成するまでに向き合う葛藤や問題を描いています。
    ワンドは無限の拡大を意図するスートです。ソードは「闘争」に対して、「相手を出し抜く」ことに叡智をつかいますが、ワンドは相手と競い合う際に「自分を無限に高めていくこと」を目指します。ソードのように敗者を産むことはないかもしれませんが、無限の拡大競争、終わらない競い合いを生み出すものとなります。そワンドの9は競争が生み出す対立や、競争することそのもので負うダメージや偏狭さをあらわしています。競い合うことは、前向きな効果を産むこともありますが、ライバルを意識しすぎることで自らの視野を狭くしてしまうこともまたあるのです。

    正位置

    正位置のワンドの9は困難に直面していること、情況が硬直していること、物事が停滞していること、「待機状態」にあることを示唆します。自分が積極的に動いて物事を打開できる情況というよりは、今は「待ち」の状態であるようです。また、自分自身が凝り固まってしまって視野が狭くなっていないか警告されている場合もあります。いずれにせよ、今は情況が動く時ではないようです。

    逆位置

    逆位置のワンドの9は正位置が寓意していた硬直、停滞、待機が過剰や不足にはたらいていると考えます。過剰の場合には、待っていても情況は動かないこと、待っているとより情況が悪くなることを意味します。見守っていても情況は悪化していきそうです。不足の場合には、膠着状態から動きはじめることができることを暗示します。いずれにせよ、「待機」の時はもはや終わりを告げたことになりそうです。

    34-3 カップの9

    スート×番号のもつ意味
  • カップの意味:精神、閃きの受容、愛情、喜び、空想、受動性
  •   

  • 9(イェソド:基礎):各スートの完成までにおこる葛藤、問題

  • ホップ
    うおお。これまたドヤってるねえ。
    むぎ
    そうだねえ。ウェイト版ってちょっと表情わかりにくいんだけど、このカードとペンタクルの4はめっちゃ人間臭い表情してるって僕は思うんだよね
    ホップ
    ペンタクル4の「こっち見んな」感すごいよね
    むぎ
    僕にはドヤってるおっさんにみえるんだけど、ウェイト的にはもうちょっとマイルドな感じみたいなんだよね

    善良そうな男性が心から満足して豊富なワインを背後のカウンターに並べている。物質的にも、精神的にも、彼の未来は確約されている。
    魔女の家BOOKS アーサー・ウェイト「タロット公式テキストブック」より

    ホップ
    え?この人善良なの???
    めっちゃお代官様感あるよ?
    むぎ
    ウェイト的にはこの人は善良な成功者みたいだね。
    小アルカナはウェイト版から絵がついたから、「何をかいた絵なのか」が大アルカナ以上にはっきりしてるし、絵もわかりやすいんだけど、時々、「え?!まじか」みたいな意図があるんだよねえ。
    ホップ
    いうて、20世紀なりたてのイギリスでかかれてるからねえ。
    今だと伝わりにくい意図もあるよねえ
    てか、この人なんでワインをずらっとならべてんの??
    むぎ
    彼の豊かさの象徴なんだとおもうよ。カップは精神的な豊かさをあらわすんだけど、「衣食たりて礼節をしる」なんて言葉があるとおり、精神的な余裕は物質的な余裕がやっぱり必要になってくるんだよね。
    ホップ
    なるほどねえ。
    でもさ、この9のカードって葛藤なんでしょ?この人めっちゃ満ちてて葛藤とか感じないよ?
    むぎ
    これだけみたらね。でも、カップの10と比べてみたらわかるんじゃないかな

    ホップ
    あっ…(察し)
    むぎ
    カップの3なんかをみてもらうとわかるとおり、カップの喜びって富そのものじゃなくて、「分かち合うこと」であり「愛情」なんだよ。
    彼は人柄もよくて、豊かで、人望もあついだろうし、きっとこのカップのワインも頼んだら快く飲ませてくれるだろう。
    でもね、彼はこの豊かさを「人に見せる」ことにはつかっていても、それを分かち合う喜びにはいたっていないんだよ。
    ホップ
    ええ…じゃあぼっちでさみしいってこと?
    むぎ
    ううん。そうじゃない。
    9のカードは10に到達するためのステップだって考えたらいい。
    10のカードでカップは家族や仲間で分かち合う喜びを表現している。でも、そのわかちあいの表現のためには、まず何より、「自分が満たされる」ことが不可欠なんだよ。
    10のカードは周囲と愛を分かち合う前の段階、まずは自分自身で自分を満足して、心理的安心感を得ている情況が描かれているとおもうんだ

    基本的な解釈

    満足そうな表情の男性がたくさんならんだカップの前に鎮座しています。
    一見、強欲な商人のようにも見えますが、アーサー・ウェイトはこのカードに以下のような説明を加えています。

    善良そうな男性が心から満足して豊富なワインを背後のカウンターに並べている。物質的にも、精神的にも、彼の未来は確約されている。
    魔女の家BOOKS アーサー・ウェイト「タロット公式テキストブック」より

    彼は、精神的にも物質的にも満たされた状態にあります。
    ですが、各スートの9は完成までにおこる葛藤や問題をあらわします。一見問題のないこの男性の場合は何をあらわしているのでしょうか?
    カップの3で、収穫物を側に置いて踊り交わす女性が描かれ、カップの10では家族の姿が描かれているように、カップというスートの本質は愛情であり、分かち合いであり、精神的な充足です。カップの9の男性は物質的にも精神的にも満たされているのですが、それを分かち合う家族や相手とは出会えていないことが彼が「完成の途上」であることをあらわしています。
    ですが、このカードは決して男性の「孤独」を揶揄しているものではありません。
    「上機嫌でいること」が「大人の最上のマナーである」としばしば言われますが、「自分が幸せで満たされていること」が実は「他の人と幸せをわかちあう」ためにとても大切なことなのです。そのため、このカードは「他人との幸せな絆」を築いていくためには「誰かに幸せにしてもらうこと」を目指すのではなく、自分自身が幸せであることがまず大切なことも寓意しているといえるのではないかとおもいます。

    正位置

    正位置では、満足や充足といったこのカードのキーワードが中庸にはたらいていると解釈します。
    物質的、精神的に満たされて幸福な状態が約束されています。今考えていることは、満足のいく形で実現されていくことになるでしょう。そしてその満足感を他の人とわかちあっていくことが達成した後のあなたの課題になっていきそうです。

    逆位置

    逆位置のこのカードに対して、アーサー・ウェイトは「真実、忠実さ。自由。または別の解釈として過ち。不完全」と表現しています。これはどういうことでしょうか?
    逆位置では満足や充足といったこのカードのキーワードが過剰や不足にはたらくと考えます。「過ち、不完全」というのは「満足」や「充足」の不足と解釈すればいいでしょう。では「真実。忠実さ、自由」とはどう考えればいいのでしょうか?
    ここでウェイトが述べている「真実、忠実さ、自由」とは、「物質的な豊かさではない真実の豊かさ」を意味するのではないかと思われます。
    このカードは言ってみれば「物質的な豊かさが精神的な豊かさをもたらしている」、逆にいうなら「物質的な豊かさがなければ精神的な豊かさは存在しない」ということを表しているともいえます。確かに、物質的な豊かさは精神的な豊かさをもたらすでしょうが、それは必要十分条件とは言えないのではないでしょうか。
    逆位置のカップの9は物質的な豊かさからの執着から自由になり、真実の豊かさに気づくことの可能性も示唆してくれているカードといえるのではないかとおもいます。

    34-4 ソードの9

    スート×番号のもつ意味
  • ソードの意味:知性、闘争、対立、怒り、感情の乱れ、知性の使用
  •   

  • 9(イェソド:基礎):各スートの完成までにおこる葛藤、問題

  • ホップ
    説明されなくても、まあいい意味はないんだろうなあってわかるカードだね
    むぎ
    アーサー・ウェイトにもはっきりと、「ソードは一般に人間にとって恵みのあるシンボルではないので」って書かれちゃってるからねえ。
    ホップ
    ソードの10も悲惨だもんねぇ
    ソードの10です
    ホップ
    8でしばられてて、10で殺されちゃってるところみると、この人は処刑の前の日でへこんでるの?
    むぎ
    10で殺されてる人とこの人は別の人だねえ。
    だって10は男性だもの。わざわざ別人扱いで書いてるってことは、9のこの人が10の運命をたどるわけではないとおもうよ。
    ウェイトはこのカードに対してこんな風に述べてる

    寝台の上で悲嘆にくれる女性の上に、剣が並んでいる。これほどの悲しみを、彼女はいままで知らなかった。これは完全な悲しみのカードである。
    魔女の家BOOKS アーサー・ウェイト「タロット公式テキストブック」より

    ホップ
    「完全な悲しみ」…ってずいぶん強い表現だねえ。
    むぎ
    そうだね。
    「彼女」とわざわざ表現されていること、そして毛布に情熱を表す赤い薔薇や12星座の象徴がえがかれていることから考えて、この「悲しみ」は「愛情」をともなうんだよ。
    悲しみといえば、ソードの3もこんなカードだったよね。
    むぎのタロットソードの3です

    むぎ
    タロット的には「深い悲しみ」っていうのは「愛情」が裏にあるっていうことじゃないかなっておもうんだ。
    もちろん、自分が傷つくのはとてもつらい。でもそれはどちらかというと「痛い」とか「怖い」だとおもうんだ。
    「完全な深い悲しみ」っていうのは、「自分ではどうしようもない誰か」に何かがおこってしまうこと、あるいはその愛する誰かと引き裂かれてしまうことじゃないかなって思うんだ
    ホップ
    ああ…そっか。ソードの10が「戦いによる死」だとすると、その過程では誰かが大切な人を必ず失うんだもんね。
    むぎ
    そういうことなんだ。
    ソードもワンドもどちらも自分の勢力の拡大を望んで競争する。
    でも無限に広がる世界の中で自分の力の拡大を競い合うワンドとちがって、ソードは「限られたもの」を奪い合うカードだから、誰かが勝ったら誰かが負けるんだよ。
    ホップ
    そうだよねぇ…ワンドの叩き合いは和気藹々のわちゃわちゃでおわるかもしれないけど、
    むぎのタロットワンドの5です
    ホップ
    ソードで同じことしたら絶対誰かが死ぬもんね
    むぎ
    そうなんだ。
    ゼロサムゲームであるソードは、相手を完全に滅ぼすまで戦いを終えることができない。だから必ず深い悲しみを生んでしまうんだよ

    基本的な解釈

    一人の女性がベッドの上で深い悲しみに沈んでいます。アーサー・ウェイトはこのカードに

    寝台の上で悲嘆にくれる女性の上に、剣が並んでいる。これほどの悲しみを、彼女はいままで知らなかった。これは完全な悲しみのカードである。
    魔女の家BOOKS アーサー・ウェイト「タロット公式テキストブック」より

    という説明を加えました。
    「これほどの悲しみ」と表現されている悲しみは、ベッドに情熱の象徴である薔薇がえがかれていることから、愛するものとの別離や、愛するものへの危害といった、彼女の力では防ぐことのできない痛みであることが推察されます。
    限りある資源を奪い合い、叡智でもって相手に打ち勝つことを目指すソードでは、必ず敗者を生み出します。
    また、ワンドとちがって、ソードが明確に殺傷威力をもった武器であるように、最後の一人の勝者がのこるまで血で血を洗うような「脱落者」を生み出す争いが寓意されます。
    そして、ソードはその完成である10のカードで、必ず「敗死」がおとずれることを示唆します。
    ソードの9は、争いや戦いのソードの達成のためには、必ず深い悲しみが影にあることを示唆しています。

    正位置

    深い悲しみや嘆きを寓意します。
    結果そのものが期待できないこと、うまくいかないことも表しますが、それ以上に、その失敗によって心に大きなダメージを負うことを示唆しています。
    自分自身を占うときはもちろんですが、他の人を占うときに、このような望ましくないカードがでてきた場合、どのように伝えるのか悩む人も多いのではないでしょうか?
    タロットカードの中には人生で生きていく上で「不必要な物」はないのではないかと捉えていくことで、このカードがでてきたときの捉え方がかわってきます。
    誰しも望むならば悲しみのない人生を送りたいとかんがえているのではないかとおもいます。ですが、悲しみというのは感情の一つの側面であり、悲しみを感じる心があるからこそ、私たちは喜びを心から感じることもできるのです。
    このカードが出てきた時、深い悲しみは避けられないかもしれません。ですが、深い悲しみからしか学べないこともたくさんあります。
    このカードは深い悲しみをあらわすとともに、不思議な静けさのあるカードでもあります。
    彼女は生まれてはじめての深い悲しみにさらされています。ですが、彼女はその悲しみを抑圧するのでも、被害者意識にとらわれるのでもなく、深く受け止めて、感じ切って、まるで、「この悲しみも私が愛することを知っているから」とあらわしているかのようにもみえます。
    喪失の深い痛みは「それまで深く愛した」ことの裏返しです。
    その痛みを最後まで感じきることで、愛をまっとうすること、そしてその痛みを感じ切った時に、新しいステップを踏み出せることを彼女は寓意してくれています。

    逆位置

    ウェイトはこのカードの逆位置に「監禁。疑惑。疑念。理由のある恐れ。恥辱。」という不思議な解釈をつけています。
    これはどう考えればいいのでしょうか?
    このカードが寓意するのは「深い悲しみ」です。そしてその悲しみを避けるのではなく、「感じきること」が表されています。
    「深い悲しみ」というのはもうすでに過剰の状態ですので、このカードの逆位置は「深い悲しみを感じること」の不足であると考えていいと思います。何か悲しみがおこったとき、人はその悲しみを「抑圧」したり「感じないフリ」をして、自分の心を守ろうとします。ですが、魂や精神はとても正直なもので、いくら抑え込んでもその気持ちは完全になくなることがありません。そして抑え込んだ感情はどうなるかというと無意識のうちに深く沈み、知らず知らずのうちにあなたの行動を制限してしまうことになります。
    そのため、このカードの逆位置は「昇華しきれなかった過去の悲しみが無意識の抑圧となって働いている状態」と解釈すればいいのではないかなと思います。
    このカードが出てきた時点で、「悲しみ」が根元にあります。あなたの中の感情はあなたが見つけて、「感じきる」ことで手放すチャンスが与えられます。ですが、その感情に向き合わないかぎり、永遠にその感情はあなたに見つけて欲しくて、何度でも亡霊のように浮上してくることになるのではないでしょうか。

    34-5 ペンタクルの9

    スート×番号のもつ意味
  • ペンタクルの意味:収穫、完成品。財産。自然が生み出すもの。家族。
  •   

  • 9(イェソド:基礎):各スートの完成までにおこる葛藤、問題
  • むぎのタロットのペンタクルの9です
    ホップ
    なんかソードとうってかわって、いい感じになったね。でもこれ何してるところなの???
    むぎ
    ウェイトはこのカードに対してこんな説明を加えているよ。

    手の上に小鳥を乗せた女性が、領主の館の庭でたわわに実った葡萄に囲まれて立っている。それは広い領地で、あらゆる意味で潤沢さをあらわす。それは彼女自身の所有地であり、物質的な豊かさを証明する。
    魔女の家BOOKS アーサー・ウェイト「タロット公式テキストブック」より

    むぎ
    んでね、この鳥さん、僕たちのカードだとわかりにくいんだけど、覆面されちゃってるんだよ

    ホップ
    …え?????
    要するに、この人、自分の庭で、覆面した小鳥さんもってウフフってしてるってこと????
    ヤバくない…?????
    むぎ
    まぁ、冷静に考えたらそうなんだけどさ
    このカードそのものは、経済的な成功と安定をあらわすんだよ。
    ホップ
    ええ…だったら覆面してる鳥さんとかいらないじゃん…
    むぎ
    まぁねぇ。
    でも思い出してほしいんだ。この9のカードは完成にむけての葛藤や問題をあらわすカードなんだよ。
    そして、ペンタクルの10はこういうカードなんだ

    ホップ
    あ、家族がいるんだね。
    なんかこれ、カップの9と10とキャラかぶってない???
    むぎ
    家族っていう意味ではあってるんだけど、力点がちょっと違うんだ。カップの形によって形をかえる「水」をいれるカップの場合は、「愛情」そのものに力点がおかれてる。
    でも、@ペンタクルの10の場合は「家族にうけつがれていく財産」や「豊かさの継続」に力点がおかれてるんだ。
    ホップ
    あ、だからわざわざおじいちゃんがいるんだね
    むぎ
    そういうことだね。
    ペンタクルの9に戻ると、彼女の手にとまっている「鷲」は本来は知性や想像力や霊性をあらわす。
    でも彼女はそういったものを持ちながら、その鷲が自分のもとを離れないように視界を「制限」して飼いならしているんだ。
    これは、彼女が繁栄の礎である「財産」を築くために、自らに制限を貸していることを示している
    ホップ
    ああ…なんとなくわかってきた。
    カップの9のおじさんは物質的な繁栄をドヤってて、「不足」を感じてなかったけど、このお姉さんは、自分に足りないものを本当は自覚してるんだけど、見ないようにして、事業の拡大に集中してるんだね
    むぎ
    そうだね。
    ペンタクルが心から望むのは「繁栄」とその「繁栄」が末長く続いていくことなんだ。
    そしてその繁栄の礎を築くときには、他のことから目を離して「ミッション」に集中する時期が必要なこともまた、このカードは教えてくれてるんだとおもうよ。

    基本的な解釈

    裕福そうな女性が豊かな庭園でくつろいでいます。彼女の表情はやわらかいですが、なぜか彼女の手にとまったワシには頭巾がかぶせられてしまっています。
    これは何をあらわすのでしょうか?
    ウェイトはこのカードに対してこのような説明をくわえています。

    手の上に小鳥を乗せた女性が、領主の館の庭でたわわに実った葡萄に囲まれて立っている。それは広い領地で、あらゆる意味で潤沢さをあらわす。それは彼女自身の所有地であり、物質的な豊かさを証明する。
    魔女の家BOOKS アーサー・ウェイト「タロット公式テキストブック」より

    彼女は見た目通りの豊かさを表していることをウェイトは告げています。しかしその一方で、9のカードは完成までに通過する問題や葛藤を表します。
    ペンタクルの10では代々受け継がれていく豊かさや財産が寓意されています。

    家族の喜びそのものに目を向けるカップの10に対して、ペンタクルの10は受け継がれていく豊かさや財産に力点がおかれています。
    日本にも「名家」とよばれるような資産家や、代々うけつがれているような大企業はありますが、その初代を築いた人物はなみなみならぬ努力と、その事業に集中することが必要だったのではないでしょうか?
    ペンタクルの9の女性は豊かさを手に入れたとともに、その過程で、自由に飛び回る自分の感性に目隠しをして、事業に集中する必要があったことを示唆しています。
    ただ、カップの9が男性の孤独を嘲笑うカードではなかったように、このペンタクルの9も彼女が失ったもの、手放した物を嘲笑するためのカードではありません。
    人生で何か成し遂げるためには、時には何かに集中する時間が必要であることを教えてくれているカードなのです。

    正位置

    正位置では事業や経済的な成功が中庸にはたらいていると解釈します。今考えている事業があるのであれば、その事業が順調にすすんでいくことが保証されています。人間関係の問題であっても、自分が計画をしていくことでうまく進んでいくことを示唆します。
    またこのカードは問題に対して集中する必要があることも示唆しています。
    今取り組んでいる問題に集中することでより多くの結果が得られることが示唆されています

    逆位置

    逆位置ではこのカードの寓意している事業や経済的な成功が過剰や不足ではたらいていると解釈します。
    過剰の場合には、自分の思いにとらわれすぎて柔軟さが失われていることを意味します。逆に不足の場合には、自分の事業にエネルギーが集中できていないこと、それによって十分望む成果が得られない可能性があることを示唆します。
    また、救いをもたらす位置でこのカードが出てくる場合には、今まで仕事や事業に集中していた状態から、プライベートや他の面での豊かさが開かれていくことを示唆します。

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    yuki
    小学校の時にタロットに出会って以来、かれこれ20年以上タロットを取り扱っている。多くの人を占うだけではなく、自作のタロットを作るに至る。大学では分子生物学を専攻。趣味はイラストとゲーム作り。本業の傍ら、タロットを自由に楽しむ人が増えればいいなという思いからサイトを作る。