第28話:小アルカナを学ぼう その3 2のカード
- 各カードの2のカードの意味を理解しよう
2のカードを学ぼう









そのためにはまず、セフィロトにおける「叡智」はひとことでいうなら「調和」なんだよね


知恵について、エリファス・レヴィは「二原理の和解と結合」って表現してるんだけど、僕はそれは中庸にちかい感覚かな?って思ってる








27-1 2のカードの概要
小アルカナの各スートの2はセフィロトの樹でいうところの第二セフィラ、コクマーに対応します。コクマーは叡智をつかさどります、
ここでいう叡智とはどのようなものなのでしょうか?エリファス・レヴィは以下のように述べています。
知恵とは何か?二原理の和解と結合であり、カインの精力を制御するアベルの温厚、女性のやさしい勧告に従う男性、正式の結婚に打ち負かされた放蕩、秩序と平和のやさしさに手なづけられた変革的活力、愛に屈服した驕慢、信仰の霊感を認めた学問である。
このとき人間の学問は懸命なものとなる、なぜなら謙虚な態度を知り、愛によって或は普遍的慈悲によって教えられる謬ることのない普遍的条件に従うからである。(中略)
啓示は、二つ組で出来ている。すべての言葉は、二重構造で、二を想定する。
啓示から生まれる道徳律は二組から生まれる対立の上に基礎を置いている。精神と外形は、観念と記号のように、現実と虚構のように、互いに惹きつけ、また退け合う。
人文書院 エリファス・レヴィ「高等魔術の教理と祭儀」より
ロゴス=言語化できる概念全般こそが根源だととらえられているとケテルの説明で述べましたが、そうやってケテルから創出された概念を私たちが認識するとき、我々は二項対立としてどうしてもとらえます。愛を知るとその反対の憎悪を知り、影がなければ光はみえず、私たちは対立している2項を物事をとらえます。
そんな2項で世界をとらえる私たちがよりよく生きていくために、「叡智」を運用するとはどういうことでしょうか?
それは、2つの項目のどちらかに偏るのではなく、2つの概念を調和させ、バランスをとることです。
レヴィの例をかりると、変革的活力は人間の進歩のためには大切ですが、それだけを偏重して進歩だけに拘ればそれはやがて不和をもたらすでしょう。開発が自然開発を生み出した現代の我々にはそれがよくわかるはずです。変革的活力は周囲への配慮と優しさがあってはじめて健康的な運用ができるようになります。つまり、叡智とは、どちらが欠けてもなりたたない両極を調和させ、それによって両極を結合させることだとレヴィはとらえているのです。
先ほどの例でいうなら、秩序と平和だけの世界はひょっとしたら全く進歩のない管理社会かもしれません。変化をもとめる気持ちもまた必要なのです。変化をもとめる革新的活力と秩序と平和を調和させ、それらを結合させることで、「環境に配慮しながら進歩も選んでいく」というより輝かしい結論をもたらすことができます。
(余談ですが、この乗り越え方とは別に、「脱構築」というそもそもの二項対立そのものの視座をはずす捉え方もあります)
2のカードは各スートが調和的にはたらくときにもたらすものを表しているのです
27-2 ワンドの2


このカードはワンドの活動が調和的にはたらいた絵だとおもうんだけど、どう考えたらいいの?




どっちも未来に目を向けてそうな感じはあるけど…しいていうなら、3のほうがなんか、「これから全部やってやるぜ!」みたいなやる気をかんじる…かな…?



調和っていうのは、いってみたら行き過ぎないでバランスをとることなんだけど、そもそもが「無限の拡大」を望むワンドにとって、それは安定はしてるんだけど「窮屈」で「退屈」でもあるんだよ。


無限に拡大できるわけじゃないから、どこかで領域を区切って、限られた中で調和的にエネルギーをつかっていく、っていうのは「正しい」んだ。そして多分それは彼もわかってる。
でも、退屈なんだよね。
あるいは、彼はもう「すべて」を手に入れてしまったのかもしれない。無限のエネルギーの拡大を目指すワンドに対して、世界は「有限」なんだ。
調和は必ずどこかで「ストップ」がかかる。このワンドの2は安定はしてるし、成功もしてるんだけど、どこかで限度をわきまえて身を引いてる寂しさがあるきがするんだよね。
基本的な解釈
立派な衣服をきた男性が塀の中から世界を見渡しています。
彼の手には地球儀が握られていて、「これから世界を征服するぞ!」と思っているようにもみえます。
ところが、アーサー・ウェイトはこのカードの正位置にこのような注釈をつけています。
壮大なる世の富に囲まれたアレクサンダー大王の病い、苦行、苦しみを象徴しているかのようだ。
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アレクサンダー大王は世界征服という道半ばで若くして病いでなくなります。
ただここでウェイトが言いたいのは少し違うことであるようです。
各スートの2は各スートが調和的にはたらいたときに何がおこるかを示唆しています。そして調和とは、「範囲」を決めてその中でバランスを取る行為です。
無限の拡大・エネルギーの発散を象徴するワンドにとって、調和とは、「足枷」であり「制限」なのです。
アレクサンダー大王は道半ばで倒れましたが、おそらく「征服者」と呼ばれた人々は「領土の拡大」が好きなのであり、それを維持・調和することにはあまり興味がないのではないでしょうか?
夢は無限でも、世界や資源は有限なのです。資源を食い散らかして次へとすすんでいく「カウボーイ型」の生活から限られたリソースの中で循環型社会を生きる「宇宙船型」の生活へ、というのが環境問題のスローガンだった時期がありますが、ワンドのパワーが欲しいのは「無限の荒野」をどこまでもつきすすんでいく「カウボーイ」であって、その拡大の限界が見えてしまうことは退屈で悲しいものなのです。
正位置
正位置ではエネルギー・活動といったワンドのテーマが調和的にはたらいたときにおこることを表します。
無限の拡大をめざすワンドにとって、調和とは「予定調和」をさします。彼は十分に成功しており、周囲は彼を賞賛しているでしょう。また、しかし無限の冒険を求める彼にとってこの状況は少し退屈で、そしてなにより孤独であるようです。
ワンドの2は成功はしているものの、物足りなさを感じていること、次に進む一歩が見つからないこと、一定の成果はあげているものの精神的には理由のない不充足があることを示唆しています。
逆位置
逆位置では正位置のワンドの2が感じていた「予定調和」がうちやぶられることを示唆します。
ウェイトはこの逆位置のカードに対して「驚異、魅力、情動、トラブル、恐れ」と表現しています。良くも悪くも「退屈」がうちやぶられ、「変化」がもたらされるのです。
調和を打ち破り、新しいことに挑戦することを示唆していますが、その挑戦は「自分から選んだ」挑戦というよりは予期しないことや衝動で新しい状況に飛び込んでいくことを示唆しているようです。
外からの大きな力、あるいは自分の中の言葉にできない衝動によってつきうごかされ、新たな状況に飛び込んでいくことを逆位置のワンドの2は示唆しています。
27-3 カップの2


結婚式かな?
ここでの「調和」はすごくわかりやすいね





カップは精神とか愛情をあらわす。そしてその精神や愛情が調和してるときっていうのは、どっちが強いとか弱いとかじゃなくてお互いがお互いを対等に尊重しているときだとおもうんだよね。そしてお互いがお互いが対等に尊重することができたら、それが友情で愛情であれ僕たちはどんな人とでも素敵な絆を結ぶことができるんだよ

あ、むぎも僕とこれからもずっと仲良しでいてね!

基本的な解釈
1組の男女が盃をかわしています。
中央には「ヘルメスの杖」と翼のついたライオンがえがかれており、叡智と霊的な統合をあらわしています。
エネルギーの拡大を寓意するワンドにとって「調和」は「制限」でしたが、受動性や愛情を寓意し、器によってその形をかえる「水」のような「カップ」にとっては「調和」はまさに理想的な形での表現となります。
カップの寓意する愛情は愛する対象を持ちます。そしてその愛する対象と自分との調和がうまくとれているとき、そこには新しい関係性が生まれるのです。
カップの2は新たな人間関係が結ばれることを意味しています。
正位置
カップのもつ精神や愛情が「調和的」にはたらいたときにおこることを表すカードです。
素晴らしい人間関係が結ばれること、良好な関係がつくられることを意味します。
相手がいる場合にはその相手との関係を意味しますが、仕事などの場合には取引先との関係性であったり職場での関係性であったりします。
また、相手がいない問題に対しては「自分との関係性」という可能性もあるのではないかとおもいます。いずれにせよ、わたしたちは対象を対等とみなし、お互いのことを理性的に尊重できるとき、素晴らしい関係を結ぶことができるのです。
逆位置
逆位置では正位置で結ばれていた「調和的な関係」が過剰であったり不足であったりしている状況であることをあらわします。
過剰の場合には、相手との関係性に依存しすぎていること、あるいは不当な形でのつながりであることを示唆します。また、特定の相手との関係を結ぶことへの執着の強さが寓意されている可能性もあります。人間関係の問題はとても大切ですが、それを大切にしすぎてバランスをうしなってしまっては元も子もありません。関係への依存や執着が強すぎることが示唆されています。
不足の場合には、関係の破綻、悪化をしめします。人の心と心によってつながる人間関係はいくら仲が良くてもほんのちょっとしたことで行き違いが発生します。今の関係にトラブルがおこるまえに、相手を自分が尊重できているか、そして同じように自分自身を大切にできているか警告されています。
27-4 ソードの2


武術の達人が修行してるみたい。目隠しキャラは強キャラって相場がきまってるもんねえ。

まあ、無制限に拡大することを求めるワンドと違って、「相手に打ち勝つ」ことを目的とするソードと調和は相性がいい気がするね。

でもこの人ってなんでこの海だか川だかの前にいるの?



それこそバトル漫画での「達人」ってやたらギャーギャーうるさいよりもクールで冷静で、「一瞬」の隙をついてくるような静かなイメージがあるとおもうんだ。


勝負の一瞬は「人間らしさ」を排除しなきゃいけないからね。心臓を隠してるのもそういうことだとおもうよ。

基本的な解釈
2本のソードを胸の前でクロスした女性がえがかれています。
女性は目隠しをしており、後ろには静かな水と三日月がみえます。とても静かな印象を受けるカードです。
アーサー・ウェイトはこのカードに対して
もともとソードは一般に人間にとって恵のあるシンボルではないので調和や他の好ましい暗示は条件つきのものであると考えるべきである。
魔女の家BOOKS、アーサー・E・ウェイト「タロット公式テキストブック」より
と述べています。人間関係の新しい絆や喜びを寓意していたカップの2とちがい、このカードは単純に良い状況をあらわしているのではなさそうです。
勝利をめざすソードにとって「調和」とは、最終的な平和ではなく、自分の感情を抑え込み、心の安定をたもって冷静な一手を繰り出す「自己との調和」です。必ず勝者と敗者をつくる「勝利」を目指すソードは他者との真の意味での「調和」を作ることはできません。自己の内面との「調和」をはかり、勝利のための最善の一手を下す。そのためのノイズには目を向けない、そんな様子がここでは描かれています。
正位置
理性をはたらかせ、冷静に問題解決をはかることが求められています。
わきあがる感情や情動をおさえこみ、状況に対して冷静に、最善の一手を打つことを決めるカードです。
このカードがでてきたときには問題を解決することができますが、そのためには自分の私情や感情を抑え込み、冷静に解決策を実行していく必要があります。また、そのためには客観的に自分の内面をみつめる必要がでてきます。心を落ち着かせ、わきあがる恐怖や恐れをおさえて、ただ最善の一手を自力でうつ必要があること、あなたが冷静になってノイズから目を背ける必要があることがこのカードに示唆されています。
逆位置
逆位置では理性を調和させ、冷静に対応するという正位置の働きが過剰や不足にはたらていると考えます。
過剰の場合には、問題を解決しようとするあまり、自分の感情を押し殺しすぎて、バランスを崩してしまうことを示唆します。
何か問題を解決したいときには、その問題さえ片付けばすべてがうまくいくと考えがちですが、究極のゴールは「自分が幸せを感じること」であることはいつでもかわらないはずです。
問題を解決しようと焦るあまり、もっと大切なものを犠牲にしようとしていないか、自分の思いを無視してしまっていないか、カードは示唆しています。
不足の場合には、自分のヒステリックな感情にふりまわされて問題を分析できなくなってしまっていることが示唆されています。
少し問題を客観的にとらえ、ノイズに囚われている状況から少し距離をおきましょう。冷静になれば案外問題解決の糸口があっさりとみえてきそうです。
27-5 ペンタクルの2


あと、ちょっとさくらももこっぽさがあるよね。





銀行に残ってるお金が、先月と今月で同じ金額のときってさ、全く使ってないっていう場合もあるかもしれないけど、だいたいは「使った分」と「もらった分」が「つりあってる」から同じ金額になってるとおもうんだよね


財産や収穫をあらわすペンタクルにとって「調和」っていうのは収支がつりあってるってことなんだよ。
僕たちが昨日と同じように生きてられるのは、体のなかでたえず血液がながれて、心臓がうごいて、細胞が死んだり生まれたりして、「変化し続けてる」からでしょ?
ペンタクルの2には無限大(∞)のマークがえがかれてるけど、これは収穫や生産をあらわすペンタクルにとって、「調和」っていうのは「無限の変化」によって「変わらない状態」が保たれてることをあらわしてるんじゃないかなと僕は思ってるよ。
基本的な解釈
風変わりな衣装をきた青年がジャグリングのように2つのコインを操っています。コインの軌跡は無限マークをえがいており、彼がたえず動きながらバランスを保っていることを示唆しています。
バランスを保つ方法として、ソードでは「動きを極力とめること」を選びましたが、ペンタクルでは「動き続けてそのバランスをとること」を選んでいます。後ろに描かれた水も、ソードでは凪のように止まっていましたが、ペンタクルでは大きくうねりながらも秩序をたもっています。ペンタクルはソードのような「変化を恐れる」ことはなく、その変化をのりこなし、楽しむことで動き続けるのです。
生産や収穫を意味するペンタクルにとって、「調和」とは「収支の調和」をさします。
このカードは変化を楽しみながら楽しんでいくことを示唆しています。
正位置
正位置では調和のとれた「変化」を楽しむことが示唆されています。
人間は変わりたくない生き物で安定をもとめます。しかし、その変化を楽しむことができれば新たなステージへと変化していくことができます。
このカードがでてきたら、変化を恐れることなく楽しんでいくことが求められています。あなたはひょっとしたらもたらされる変化に恐怖を感じているかもしれませんが、この変化の波は楽しむことができればうまくのりこなすことができる波です。変化をおそれず、楽しむことが求められています。
逆位置
逆位置では正位置で寓意されていた「調和のとれた変化を楽しむこと」が過剰または不足にはたらいていることを示唆しています。
過剰の場合には変化があなたのコントロールをはなれており、無軌道になってしまうことが示唆されています。毎日変化があるのは楽しいことですが、あなた自身が自分の方向性をもつことなくただ振り回されるだけではいつか荒波に飲み込まれてしまいます。流れに身をまかせるだけではなく、自分がどうしたいのかしっかり考えてコントロールしていくことも大切だとカードは示唆しています。
不足の場合には変化を恐れて臆病になってしまっていることが示唆されます。変わっていくものに目を背けても何も問題は解決しません。心をきめて変化にむきあってください。
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