第15話:タロットカードの意味をしろう! 11 正義
- 正義のカードの構図、モチーフを理解しよう
- 鑑定で正義が出てきたときの意味をしろう!
15-1 正義ってどんなカード?





一応力の方には「私が納得する理由がある」って順番の入れ替えの説明がなされているけど
正義のほうには全く説明がない。しかも、肝心な正義そのものについても
「伝統的なシンボリズムに従っており、特にその明らかな意味を保持している」って
「ウェイト版」の「正義」の説明についてはほとんど加えていない。

僕はその伝統がわからないわけで。

文字通り、人々に正義を訴え、公平性をその天秤で測る女神だよ。
このカードはシンプルに「公平・公正」っていう「正義」の徳目をあらわしたカードだって解釈すればいいと覆うよ。

でもさ、「正義」って正しいってことでしょ?
その正しさっていうのが逆位置にまわったらどういう風に解釈すればいいの?
正義は勝つとはかぎらない、みたいな皮肉になっちゃうの?





戦争ってよくないことだよねえ。
でもね、「悪いことしてやろう!」なんて思って行われる戦争なんてほとんどなくて
少なくともそれなりの正義っていうのは必ずどちらにもあるはずなんだよ


本当はね、正しいことなんて誰にもわからないんだ。
だからどんなに正当性があろうと、公平性があろうと、それはとりあえずの答えでしかなくて
絶対的正義なんていう人がいたら、たぶんその絶対性がそもそも正義じゃないってことになっちゃうんだよ
だから、逆位置の正義は独断・偏見・厳しすぎる規律みたいな意味で解釈する形になるね


カードそのものもすっきりしてるんだよ
15-1 正義ってどんなカード?
15-1−1 カードの説明
剣と天秤を持った女神が正面を見据えています。
ウェイト版とマルセイユ版の構図にほぼ変化はありませんが、アーサー・ウェイトはこのカードと「力」の順番を「わざわざ」入れ替えました。
彼女の持つ天秤は、水平を保っており、何かを切り開く剣はまっすぐ天を向いています。彼女は2本の柱のちょうど真ん中に立ち、王冠には3つの頂が均等に並び、その中心には正方形の飾りが、また、彼女の左右対象のマントの中心には、正方形と円が描かれています。彼女は完全な中立な位置に居ます。
「運命の輪」は人が関与しない天の運行を表していました。「運命の輪」が決定的な瞬間を齎したとしても、その瞬間に賭ける「決意」がなければ、運命を切り開くことはできないでしょう。では、その「決意」とはどのように手に入れれば良いのでしょうか。
答えはシンプルで、「ただ決めること」を選べばいいのです。
さて、もう一度、ウェイト版の正義の図柄を眺めてみましょう。
ウェイト版において、似ているカードの構図には、何らかの作為があります。ざっくり言うと、この絵は2本の柱の真ん中に女の人が座っている絵です。
この構図は、「女教皇」でも見られた構図です。「正義」のカードは11番。つまり、女教皇の「2」が隠れています。中央の女性のポーズに注目すると、彼女は右手の剣で天を指し、左手の天秤を地に水平に向けています。このポーズは、「魔術師」のポーズに似ています(ちなみに同じポーズは、悪魔と女帝もとっています)。「魔術師」は「1」のカードです。11番には、「1」が2回登場します。「正義」のカードは、「女教皇」と「魔術師」が弁証法的に高次で融合しているカードなのです。
「女教皇」は誰にも触れられない「神秘」を、「魔術師」はすべての創造の根源となる「意思」を表していました。
ヤスパースは、自らが属する「ドイツ」が、第二次大戦で犯した罪について、「刑法上の罪」「政治学上の罪」「道徳上の罪」「形而上の罪」の4つに分類して説明しました。「刑法上の罪」と「政治学上の罪」については、「法」に基づいた「客観的」な判断を下すことができます。しかし、「道徳的および,形而上的な非難を政治的意図の手段とすることは,断じて排撃せねばならない。」ことだと彼は述べています。正義の女神が求めているのは、他の誰かの意図ではなく、あなたが、あなた自身に責任を負い、あなたの意志で「判断」を下すことなのです。
15-1-2 正位置での解釈
正位置の正義は、あなたに迅速・公正な決定を求めています。
何が正しいのか、間違っているのか、完全に答えを出すことは不可能かもしれません。その時に正しいと思って やったことが、後で大きな損失や後悔につながることもあるかもしれません。「失敗したらどうしよう・・・」「この決定の責任をわたしはどうとればいいんだろう」そんな風にあなたに迷いが生じることもあるかもしれません。
しかし、あなたが決定できるのは「今」の判断であって、「未来」というまだ訪れない時間はあなたの手の中にありません。また、「責任」をとることは原理的には不可能です。「未来」を憂うことと、「責任」を恐れることは、どちらも原理的に不可能なことを追い求めているので、両者を満たすまで、前には進まないという思いは、あなたを永遠に押しとどめることができます。
あなたにできるのは、「今」の行動をあなたが決めることだけなのです。
「女教皇」と「魔術師」が高次で融合した「彼女」はあなたが「あなた」だけに従って、判断を下すことを求めています。彼女は画面の中央に立ちながら、「両方」の手を挙げ、人々に囲まれた「法王」ではなく、「片方」の手だけをあげ、たった一人で立っているのです。あなたがあなたの決定にたいして、気にしなければいけない相手は、本質的にはあなたしかいません。
片手に剣を持った姿は不動明王にも似ています。不動明王の剣も、正義の剣も「諸刃の剣」、つまり、自分にも向けられている刃です。内心の決意を外の世界に実行することを、彼女は求めているのです。
15-1-3 逆位置での解釈
「裁き」「判断」は、すべて「主観的」なものです。
ベンヤミンは、「善悪の判断」について、
「蛇に誘われて行き着く認識、つまり何が善で何が悪かという知識は、名を欠いている。(中略)それは外側からの認識であり、創造する言葉の非創造的な模倣である。名はこの認識のなかで、自分自身から離脱してしまう。すなわち、この堕罪こそが、名をもはや侵されぬ姿のままに生かしてはおかない、人間の言葉の誕生の時なのである。」
と述べています。
つまり、いかに公平な判断であったとしても、「善悪の判断」というのは、物事に「余分なもの」を付け加える行為であり、「絶対に正しい」基準は存在しないということです。
逆位置の正義はあなたに、「あなたの」正義が凝り固まっていないか、偏っていないか警告しています。
カード全体の説明で述べた通り、あなたの「正義」は誰に対して恥じるものでも、誰に対して説明を求められるものでも、本来的にはありません。しかし、それは、あなたがあなたの「正義」をアップデートする必要が一切ないと言っているわけではないのです。
考えを改めることや、過ちを認めることは、あなたが劣った存在であることを受け入れることではありません。
あなたがあなたの素晴らしさを信じるからこそ、あなたは柔軟に、いろいろな考えを受け入れることができるのです。
「正義」のカードは結論を出すこと、決断を下すことの重要性を伴っていますが、その結論・決断のための判断材料は常にアップデートしていくことで、より磨いていく必要があるのです。
15-2 占いで正義が出てきたとき受け取れるメッセージ
15-2-1 一般的なメッセージ
正位置
今こそ決断のときです。あなたの今抱えている問題に必要なのは、あなたの決断だけです。
考えうる選択肢はどれもメリット・デメリットがあり、また、理論的に考えたら正しいことであったとしても、あなたの心が動かない選択肢もありえるでしょう。ですが、完全無欠の正解が存在しないように、完全な失敗も存在しません。客観的で絶対的な正しさは存在せず、すべての結論・選択肢は未決定である現在では等価です。等価交換ので切る選択肢の中から、あなたの心にそった決断を1つくだしましょう。百万のデータも熟考も、たった1つの決断と行動の前では無力です。今こそ決断を下しましょう。
逆位置
自分の常識を疑ってみましょう。
あなたが困難だと考えていること、直面している問題、許せないことは、ひょっとしたらあなたの認識が作り出したものかもしれません。
私たちは容易に「普通はありえない」とか、「どう考えてもそうだよね」とか「常識的」な判断をくだしますが、常識そのものに力はありません。
アインシュタインは「常識とは、人が18歳になるまでにあつめた偏見のことである」と述べました。
1000年前の人に、「地球がまわっている」という常識を伝えたら、何を頭のおかしなことを、と笑い飛ばされたでしょう。
あなたの常識や判断を疑ってみましょう。ひょっとしたら、あなたを苦しめているのは、問題そのものではなく、問題に対してあなたが下した判断かもしれません。
15-2-2 恋愛でのメッセージ
正位置
あなたに求められているのは「答え」を出すことです。
あなたの迷い・悩みの正体は、「はっきりしない」ことに換言できるのではないでしょうか。
あなたの「答え」を邪魔しているのは、失う恐怖でしょうか?はっきりしてしまうことの不安でしょうか?
確かに、「答え」を出すことで、一つ後戻りのできない道を作ってしまうかもしれませんが、それがどんな結論であれ、何か「答え」を出して前に進まないことには、永遠に迷いの渦の中から抜け出すことができません。
毅然とした態度で答えに向き合いましょう。
逆位置
あなたの常識で、あなたや、相手を縛るのをやめてみましょう。
恋愛では時にお互いの価値観の違いが問題を生むことがあります。
例えば、あなたが連絡にたいして返信はなるべく出すのが礼儀だと考えていたとしても、相手は急かすようで悪いから、返事は少し間をおいてから返すほうがお互いのためになる、と考えているかもしれません。また、昨日と今日で違う結論をだすこともあるでしょう。
しかし、それはどちらかが絶対に正しくて、どちらかが完全に合わせなければいけないという問題ではありません。たとえ、集団の99人がそう考えていたとしても、残りの1人の思考や行動を規制する理由には原理的にはなり得ないのです。また、あなたの判断や常識があなた自身を苦しめることもあります。雑誌でみた同世代像とあなたの今の姿がかけ離れていることに劣等感を感じたり、あなたの感じること「普通」に、あなたがおいつかず、引け目を感じることもあるかもしれません。
しかし、あなたはあなたや相手に対して何かをきめつけたり、裁いたりする必要はありません。
今は少し、あなたの問題のなかに、あなたの「常識」が作り出したものがないか、点検してみましょう。常識ではなく、あなたの心が、魂が満ちる体験にしていきましょう。
15-2-3 仕事でのメッセージ
正位置
迷いを断ち切り、一つの「結論」を出しましょう。
あなたはその問題にたいして、十分すぎるほど悩み、考え、説明会に行ったり本を読んだり、努力を重ねてきました。今こそテイクオフの時です。
あなたの集めたデータやスキルはあなたから見たらまだ完全ではないかもしれません。しかし、その「前」に進むことを拒んでいるようにあなたが感じている「理由」は、あなたが前に進むことの恐怖から生み出した「理由」ではありませんか?
今は、悩むよりも、一つの「結論」を出し、前に進む時です。
世界は計算不可能性に満ちており、すべての結論は「暫定的」でしかなく、「誤り」です。だからこそ、あなたにできることは、「今」のあなたが後悔しない1つの結論を下すことです。今手元にあるデータ・スキルから1つの方向性・答えを見つけ出しましょう。「答え」を見つける目線で手元に揃っている材料を探し、決定しましょう。
逆位置
あなたの常識で苦しまないようにしましょう。
ビジネスの世界では、守るべきルールやマナーがたくさんあり、時にはそのルールやマナーを知っていることが、その人を値踏みする材料になることもあるでしょう。しかし、どれほど多くの人がそう思っていたとしても、それがあなたにとって正しいことの判断材料にはなり得ません。すべての常識や知識は相対的なものであり、それではない可能性に世界は満ちていることを自覚しましょう。
あなたはなにかを決めなければいけない局面にいたとしても、「常識だから」「当然だから」とあなたが考えていることに、疑いをはさみましょう。
前のお話
15-2 占いで正義が出てきたときに受け取れるメッセージ