ソードの9
基本的な解釈
一人の女性がベッドの上で深い悲しみに沈んでいます。アーサー・ウェイトはこのカードに
寝台の上で悲嘆にくれる女性の上に、剣が並んでいる。これほどの悲しみを、彼女はいままで知らなかった。これは完全な悲しみのカードである。
魔女の家BOOKS アーサー・ウェイト「タロット公式テキストブック」より
という説明を加えました。
「これほどの悲しみ」と表現されている悲しみは、ベッドに情熱の象徴である薔薇がえがかれていることから、愛するものとの別離や、愛するものへの危害といった、彼女の力では防ぐことのできない痛みであることが推察されます。
限りある資源を奪い合い、叡智でもって相手に打ち勝つことを目指すソードでは、必ず敗者を生み出します。
また、ワンドとちがって、ソードが明確に殺傷威力をもった武器であるように、最後の一人の勝者がのこるまで血で血を洗うような「脱落者」を生み出す争いが寓意されます。
そして、ソードはその完成である10のカードで、必ず「敗死」がおとずれることを示唆します。
ソードの9は、争いや戦いのソードの達成のためには、必ず深い悲しみが影にあることを示唆しています。
正位置
深い悲しみや嘆きを寓意します。
結果そのものが期待できないこと、うまくいかないことも表しますが、それ以上に、その失敗によって心に大きなダメージを負うことを示唆しています。
自分自身を占うときはもちろんですが、他の人を占うときに、このような望ましくないカードがでてきた場合、どのように伝えるのか悩む人も多いのではないでしょうか?
タロットカードの中には人生で生きていく上で「不必要な物」はないのではないかと捉えていくことで、このカードがでてきたときの捉え方がかわってきます。
誰しも望むならば悲しみのない人生を送りたいとかんがえているのではないかとおもいます。ですが、悲しみというのは感情の一つの側面であり、悲しみを感じる心があるからこそ、私たちは喜びを心から感じることもできるのです。
このカードが出てきた時、深い悲しみは避けられないかもしれません。ですが、深い悲しみからしか学べないこともたくさんあります。
このカードは深い悲しみをあらわすとともに、不思議な静けさのあるカードでもあります。
彼女は生まれてはじめての深い悲しみにさらされています。ですが、彼女はその悲しみを抑圧するのでも、被害者意識にとらわれるのでもなく、深く受け止めて、感じ切って、まるで、「この悲しみも私が愛することを知っているから」とあらわしているかのようにもみえます。
喪失の深い痛みは「それまで深く愛した」ことの裏返しです。
その痛みを最後まで感じきることで、愛をまっとうすること、そしてその痛みを感じ切った時に、新しいステップを踏み出せることを彼女は寓意してくれています。
逆位置
ウェイトはこのカードの逆位置に「監禁。疑惑。疑念。理由のある恐れ。恥辱。」という不思議な解釈をつけています。
これはどう考えればいいのでしょうか?
このカードが寓意するのは「深い悲しみ」です。そしてその悲しみを避けるのではなく、「感じきること」が表されています。
「深い悲しみ」というのはもうすでに過剰の状態ですので、このカードの逆位置は「深い悲しみを感じること」の不足であると考えていいと思います。何か悲しみがおこったとき、人はその悲しみを「抑圧」したり「感じないフリ」をして、自分の心を守ろうとします。ですが、魂や精神はとても正直なもので、いくら抑え込んでもその気持ちは完全になくなることがありません。そして抑え込んだ感情はどうなるかというと無意識のうちに深く沈み、知らず知らずのうちにあなたの行動を制限してしまうことになります。
そのため、このカードの逆位置は「昇華しきれなかった過去の悲しみが無意識の抑圧となって働いている状態」と解釈すればいいのではないかなと思います。
このカードが出てきた時点で、「悲しみ」が根元にあります。あなたの中の感情はあなたが見つけて、「感じきる」ことで手放すチャンスが与えられます。ですが、その感情に向き合わないかぎり、永遠にその感情はあなたに見つけて欲しくて、何度でも亡霊のように浮上してくることになるのではないでしょうか。
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