カップのクイーン
優美な女性が精巧につくりこまれたカップを見つめています。彼女の足下にはおだやかな海がひろがっており、きれいな石がしきつめられています。
ウェイトはこのカードに対してこのような説明を加えています。
美しく、色白で夢見がちな女性。彼女は、まるでカップの中に幻想をみているような風情である。だが、それはあくまでも彼女の一面の性格に過ぎない。彼女は夢見がちでありながらも同時にまた行動的でもあり、その行動がまた彼女の夢をふくらませる。
魔女の家BOOKS アーサー・ウェイト「タロット公式テキストブック」より
各カップのクイーンはそのスートが深く理解されたときにおこることが描かれています。精神、閃きの受容、愛情、喜びなどをあらわすカップのクイーンでは、そういったものがどのようなものかという本質が描かれています。
このカードは少し女帝にも似ていますが、生産・豊穣の象徴で、ただただ命に満ち溢れた中にいたのに対して、カップのクイーンは、作り込まれた人工物であるカップを手にしています。
それは、愛情や感情は意図や知性と結びつくことによって確かな形を得ることができることを示唆しています。
カップが象徴する水は器によって形を変えます。荒れ狂う波になることもできれば、穏やかで美しい海原をつくることもできます。それはまさに、感情の動きにも似ているのではないでしょうか?
感情や愛情は世界で最も美しいものも、もっとも残酷なものも作り上げることができます。
愛情の素晴らしさはいうまでもありませんが、愛情がもつれた結果生み出された憎悪での殺人現場と、単なる物取り目的の殺人現場では、前者のほうが凄惨を極めることからもそれは窺い知れます。
カップのクイーンは正しい意図と知性と組み合わせることによって愛情や感情は世界で最も美しいものを作り上げられることを教えてくれています。
そのため、このカードは愛と知性が結びつくことによってもたらされる恩恵をあらわしています。慎重さと愛情深さをあわせもったクイーンのカップは、いわば、女帝の愛情と女教皇の慎重さをあわせもった存在といえるかもしれません。
正位置
このカードが出たときには愛情や優しさを深い知性とともに行使することが求められています。ただ、感情的に本能的に愛情をばらまくのではなく、その人のことを思いやり、深く考え、行動することが求められています。そのため、このカードがでてきたときにはまずあなた自身が対象について深く知り、そして考えることがもとめられています。その対象が具体的な人の場合には、その人のことをよく考えて、あなたの愛情を行使していくことが求められています。また、その対象がプロジェクトであったりモノ出会ったりする場合には、その対象について深く考えた上で、あなたにとっても関わる人にとっても一番幸せになるような提案をする必要があると述べられています。
具体的な事象がない場合には、あなたの中で愛情を心の底から感じられるような素晴らしい恩恵がもたらされることを示唆します。いずれにせよ深い愛情からもたらされるギフトがあなたの手元にとどくことになりそうです。
逆位置
知性と愛情の両立を寓意するカップのクイーンでは、知性・愛情のどちらか、あるいはどちらもが不足しているとどうなるかを想定するとわかりやすいです。知性に愛情がともなわなければ、それは柔軟性をともなった考えになるでしょうし、愛情に知性がともなわなければ、不安定な行動であったり、嫉みや妬みなどの愛情のネガティブな側面の発露となるでしょう。どちらも不足している場合には生きる意欲そのものの減衰につながります。
様々な側面をもったカードなので、状況に応じて読み替えていくことが大切になってきます。
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