第22話:タロットカードの意味をしろう! 18 月
- 月のカードの構図、モチーフを理解しよう
- 鑑定で月が出てきたときの意味をしろう!
22-1 月ってどんなカード?

でも星と月はカードの雰囲気が全然ちがってるね

夏目漱石は「I love you.」「月が綺麗ですね」って訳しときゃ伝わるなんて言ってたから
日本人にとってはお月様は単純にロマンチックなものなのかもしれないけど
ラテン語で月をあらわすluneが語源のlunaticは気が狂ったって意味だね
lunatic=月に影響された=気が狂うってことだから
西洋では月は神秘的かつ不吉なモチーフでもあるんだよね
じゃあちょっとカードを見てみようか



そしてどっちも言われなきゃ月に見えないね
お月様なのに太陽を絵に書くときみたいなギザギザがついてるんだけど
これは西洋の月の書き方のお約束みたいなもんなの?

たしかに、日本だと光の放射をあらわすギザギザみたいなのは太陽にしかかかないねえ。
ウェイトはこのギザギザに対して
「月は大小計32本の光芒を放っている」ってちゃんと書いてるから、
なんとなく残したわけではなくて、光芒は残したかったみたい。

しかしこのお月様、めっちゃ険しい顔してるね。
水辺にいるのは、犬とザリガニとオオカミかなあ?
ザリガニめっちゃでかい。

ちなみにウェイトのザリガニコメントひどいよ。
「残虐なる犬や狼であらわされるものと、それよりも更に下等なざり蟹であらわされるものである。」

でもなんで、その残虐だったりそれ以下だったりする動物たちはじっと月をみてるの?
てか、このカードってそもそも何をあらわしてるの?
なんとなく不穏で不吉だなーと思うけど

このカードを読み解く鍵は、このカードが「月」で、その「月の光芒」をウェイトがしっかりと書き込んでるところだと思うんだ
ホップ、月ってなんでひかってるの?

月って自分では光ってないよねえ。
太陽光の反射だよね?

反射なんだよね。
そんなかりそめの光を獣たちが眺めてるんだ。
また、月は自転をしていない衛星で決して裏を見ることができない上に、
形をコロコロと変えていく。
そしてまた、lunaticである月は水から這い上がってくる獣たちのような獣性を呼び覚ますんだ。

反射光で光ってる上に、裏側は見せなくて、獣たちを呼び覚まして、コロコロ顔をかえちゃう月は
なんかキケンな香りがするカードとして書かれてるんだね

精神や空想が幸せな方向にかたむくといいんだけど
思い詰める方向にいくと人間を簡単に獣に変えてしまうんだ。
月はそういう獣としての一面を暗示してるカードなんだよね
22-1 月ってどんなカード?
22-1−1 カードの説明
空に大きな「月」が上がっており、水辺には、その月を見上げるのように3匹の動物(左から犬、ザリガニ、狼)が集まってきています。
ウェイト版とマルセイユ版でほとんど絵柄に変化は有りませんが、マルセイユ版では月は表面を向いており、左右の獣はどちらも同じような姿で描かれており、左右の建物は異なる色で描かれているのに対し、ウェイト版では月は横顔で苦しそうな表情をしており、左右の獣は、犬と狼で描き分けられており、左右の建物は同じような形や色で描かれています。このように、ほとんど同じ絵柄でありながら、ウェイト版ではマルセイユ版で対称性が保たれていたものは、非対称に(月の横顔化、獣の描き分け)、非対称であったものは対称性を保った形で(背景の建物)描かれています。しかし、一番目を引く大きな変化はウェイト版では月に向かって道が描かれていることです。これはどういう意味があるのでしょう。
このカードは、タロットカードで唯一「甲殻類」がでてくるカードです。しかも、マルセイユ版でもウェイト版でもどちらも描かれており、ウェイト版では、ザリガニから伸びた道が月につながっています。神話の中で甲殻類が出てくるとき、それはしばしば「痛み」を伴います。12星座の「蟹座」は、ヘラクレスの足を挟んだ「蟹」です。彼らはヘビのように回復不可能な毒をもたらすことはありませんが、自らを犠牲にしてでも勇者の足を一時的に止める生き物です。また、犬は愚者のカードで、崖っぷちの愚者を引きとめようとしていました。このように、このカードに描かれている動物たちは「足を止める」動物たちなのです。その動物たちが、月に誘われるようにぞろぞろと丘にあがってきています。
月はコロコロと顔を変えます。満月の時は明るく道をてらしてくれるでしょうが、新月になると道は闇の中に沈みます。あなたの足を刺すザリガニや、食らいつく犬や狼たちも呼び寄せて月の光に呼び寄せられてくるかもしれません。
このように、あなたの選んだ道には妨害や、運命のいたずら、機運の変化が避けられずに訪れることもあるでしょう。欺瞞や裏切り、幻滅に寄って失望したあなたは、道を歩むことをやめたくなることもあるかもしれません。
しかし、なぜ、ウェイトはこのカードの中央に長い長い道を書き加えたのでしょうか?
ザリガニも、犬も狼も、あなたの足を一時的に止めることはあっても、決定的な致命傷を与えることや、決定的な変化をもたらすことはできません。月は確かにコロコロと顔を変えますが、月そのものが無くなることはありません。
繰り返しますが、このカードは欺瞞や幻滅や裏切りの痛みを表します。しかし、それであっても、あなたが前に進む意志を持ち続ければ、いつかは真実に到達することを表しているのではないでしょうか。
22-1-2 正位置での解釈
正位置の月は、私たちが「被害者である事」を免罪符にしないよう警告してくれています。
私たちは、何かトラブルが起こった時に、しばしば「犯人探し」を始めます。「あの人がああいう事をするから」「あの人が信じてくれないから」あなたが見つけた理由は、大変もっともらしく、実際、他人を裏切ったり、害を成したりする人もいることでしょう。人間を一番傷つけることができるのは人間です。私たちは信頼していた人から裏切られると、途方もない痛みを感じます。
私たちが「裏切られた」「嘘を付かれた」「被害にあった」と感じる時には必ず、相手に対する期待があります。労働者が雇用主に対して不満を訴えるのは、「雇用主なら、労働者の権利を守るのが当たり前」という『期待』があり、配偶者の不倫に憤るのは、「パートナーなら、相手を絶対に裏切らない」という『期待』があるからです。
環境に『期待』し続ける限り、私たちは永遠に『被害者』を演じ続けることができます。痛む心を止めることも、世界から嘘や裏切りをなくすこともできないかもしれません。でも、あなたがその『痛み』を本当に感じ、『被害者』ではなく、前に進むことを選ぶ『選択者』になることができれば、どんな苦難の道でも歩むことができます。そしてその道は必ずどこかに続いているのです。苦悩の表情を浮かべる月は、一方で、その苦悩を自らが引き受けること、耐えることを選んだ姿を晒しています。あなたが痛みや幻惑に足を取られずに前を進むことができるか、月は静かにあなたに問いかけています。
22-1-3 逆位置での解釈
私たちの判断は、しばしば「独善的」です。
よく、「陰謀論」を公言する人が居ます。マスメディアの報道は政府によるバイアスがかかっており、偽りであると論ずる彼らが、自らの手に入れた情報を信じるのは、端的に言うと「自分が手に入れたから」です。「陰謀論」が悪いと言っているわけではなく、私たちはAであるから
ではない、といった判断をすぐに下します。
ある問題に対して、分かりやすい解決策が見つかればそれに飛びつきたくなりますが、実際には問題の原因がたった一つである事は稀です。日本ではある食品が健康にいいとわかると、スーパーからその食品が無くなるくらいに皆が飛びつきますが、その食品だけが、健康に取っての絶対的な正解ではないのは、これほどブームが移り行くことからも容易に察しがつくでしょう。
月の逆位置が咎めているのは、我々がしばしば陥るこの「独善」です。
かつて、地球の周りを太陽が回っていると信じられていました。そう信じていても、だいたいのことはつじつまがあったからです。ところが、地球が回っていると考えないと辻褄の合わない現象が発見され、今や地球が回っているのは「真実」となりました。科学的な事実に限らず、すべての物事は、Aであるとわかったところで、Bではないことの証明にはなりません。「あなたの正義」だけが「正義」だと決めつけないようにしましょう。
22-2 占いで月が出てきたとき受け取れるメッセージ
22-2-1 一般的なメッセージ
正位置
苦痛や裏切りを、あなたの足を止める『言い訳』にしないでください。
あなたがやろうとしていること、考えようとしていることは、ひょっとしたら苦痛を伴う恐れがあるかもしれません。また、一緒に歩む仲間がいなくてあなたは不安かもしれません。しかし、一番の敵はあなたの足を永遠に止める不安そのものです。
苦痛や裏切りは、あなたを根本的に破壊することはできません。
あなたの心の不安は簡単にはなくならず、あなたはあなたの敵をコントロールすることはできないかもしれません。それでも、あなたが前に進み続けることを選べれば、道は必ず開けます。苦痛や裏切りをあなたが足を止める理由にはしないでください。
逆位置
何でもかんでも鵜呑みにするのはやめましょう。
ネットでも書籍でも「我こそは真実である」と名乗るもので溢れかえっています。例えば、ある本は「健康のためには炭水化物を絶対に取るな」と言い、別の本は「健康のために炭水化物を絶ってはいけない」と言います。
あなたは客観的な事実を元に、これらのことを判断しているつもりになっているかもしれませんが、実際、私たちが「真実だと判断するかどうか」は、客観的な判断根拠よりも、私たち個人の置かれた環境や、雰囲気に大きく左右されます。
逆説的ですが、「絶対的な方法は存在しない」「絶対的な真実は存在しない」と認めた上で、「自分の状況に合った方法」を選択することが、あなたにとっての最適な答えを見つける方法になります。情報にふらふらと惑わされたり、また、逆に自分の立場に固執することなく、答えの多様性を容認しましょう。
22-2-2 恋愛でのメッセージ
正位置
妙なプライドで、あなたに、相手に嘘をつくのをやめましょう。
恋愛に於いては、純粋な愛情だけではなく、「見栄」や「プライド」といったものが絡むことはままあります。浮気を繰り返す人は、「相手に不自由しない自分」というプライドで自分を保ち、駆け引きを頻繁に仕掛ける人は、相手を操っているようで「主導権を握り続ける自分」という見栄に操られているのです。
恋愛に於いて、そもそも「勝ち負け」のテーブルに乗ってしまうことそのものが一番の敗北です。
自分を大切にすることは重要ですが、あなたの価値は、あなたが誰と付き合っているか、どれぐらいモテるかといった、外部的なものでは本質的には決まらないのです。
妙なプライドや見栄で嘘を重ねるのをやめましょう。
逆位置
一途と、重いは、違います。
「あの人が好き」と「あの人しかいない」は、全く違います。結婚していても、付き合っていても、あの人の心は、あの人のものであって、「私だけのものにしたい」というのは純愛ではなく、執着です。
また逆に、「あの人しか愛さない」とあなたが決めるのも、純愛ではなく、偏狭です。本当の愛は、相手を愛することを入り口に、相手に繋がる全ての物、つまりは、全ての人を愛することを選択することであり、相手が自由に愛することを許容することです。
自立した二人が、真心を通わせ合うまっすぐで、軽やかな恋愛、そういったものを、あなたが目ざせた時、あなたの恋愛は自由になり、あなたは恋愛から自由になるでしょう。
22-2-3 仕事でのメッセージ
正位置
『政治』にとらわれないようにしましょう。
人が集まるところには、必ず『権力』をめぐる争いが生じます。一見公平に見える職場であっても、(名目上公平だからこそなおのこと)「自分を蔑ろにされたくない」という『感情の権力』の争いが生じます。もちろん、人間関係を円滑にするとはとても大切です。しかし、井の中の蛙のように、小さい場の中のパワーバランスに意識を割きすぎて、本当にあなたのやりたいことや、やり遂げたいことから意識がそれることのないようにしましょう。
一日のうち、長い時間を過ごす「職場」はあなたにとって大きな問題かもしれません。しかし、あなたにとって本当に大切な物や、大切な人を犠牲にしてまで、奉仕をする場所でもありません。社内政治にとらわれすぎないようにしましょう。
逆位置
「あなたの手に入れた情報」を鵜呑みにするのをやめましょう。
仕事に関する情報、転職に関する情報は今溢れかえっています。あなたは当然その中で最適なものを選び出す必要が出てくるわけですが、その際に「あなたが手に入れたこと」に重きを置き過ぎるのをやめましょう。
例えば、マスメデイアの流す情報やアカデミックな情報が政治的なバイアスを受けることがあるのは、間違いありません。しかし、マスメディアの流す情報や、アカデミックな情報は、多くの人の手を経て、検閲・校正を重ねることによって世に出てきた情報です。また、実は政治的なバイアスはマスメディアの情報以上に、インターネット上に情報にこそ働きかけやすいものであったりします。
情報の真偽を判断する際に、「あなたが手に入れたから」という理由が大きくなりすぎていないか検査しましょう。また、真実は一つとは限りません。一つ、わかりやすくて理解できる情報を手に入れたとしても、他を全て遮断してしまうのはやめましょう。
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22-2 占いで月が出てきたときに受け取れるメッセージ