「むぎ」って?ーむぎのタロットについてー

「むぎ」のおはなし

白いネズミの「むぎのタロット」。
その名前の由来となった小さなネズミと、私がタロットで伝えたいことのお話です。

むぎって?

むぎは、わたしが飼っていたスナネズミの名前です。
ペットショップで買ってきた、茶色いスナネズミです。

砂漠が原産地のネズミです。
色もスナネズミに一番多い、茶色いネズミでした。
日本では少し珍しいかもしれませんが、海外ではハムスターよりもメジャーなペットなんだそうです。
きっと世界の砂漠には彼みたいなネズミは何百万匹もいます。

でも私にとってはこれまでも、これからも
たった1匹の大切なネズミです。

「むぎ」と私

むぎを飼い始めて一年と少したったころ、私は大きな病気にかかりました。
ガンでした。とても珍しいガンで、再発率もそこそこ高く
標準療法も整っていないため。
・手術・放射線治療・抗がん剤、すべてを実施することになりました。
個人的にも、とても辛いことが直後で、
治療の副作用で髪の毛もすべて抜けて、生きている理由がよくわかりませんでした。

むぎは私に寄り添ってくれたわけではありません。
ただ、彼は楽しく生きていました。
毎日おやつを食べて、自分で自分のお家をきれいにして

毎日、ただ彼は生きていました。

入院している間は母がむぎの面倒をみてくれていました。
私のからだが落ち着いて、母が地元にもどって一人になっても
むぎは一緒にいてくれました。

むぎを買ってきてから3年と少し、時間がすぎました。

おわかれの日

その晩、むぎはいつもとかわりませんでした。
いつのまにか、半分かけた歯をいつもどおりめいっぱいみせて、おやつのおねだりをしてきました。
わたしはいつもどおり、おやつをあげました。

次の朝、むぎは小さくうずくまって冷たくなっていました。

最初何がおこったかわかりませんでしたが、温度のない彼のからだが
彼の命がおわったことを教えてくれました。

前の日、病気が回復して、久しぶりに会った友達がハート形の紙箱と小さな花束をくれていました。

どうしていいか、わからなかったわたしは、とりあえず、その箱の中に彼をいれて
花束からまだ蕾のアネモネを一本ぬいて、むぎの箱の上においておきました。

マンションは、むぎの体を埋めてあげられるところがありません。
なんとか近くのペットの葬儀をしてくれる業者さんを調べて、電話をかけて
むぎを置いている部屋にもどってきたとき、

むぎの箱の上においたアネモネの蕾が大きくひらいていました。
そして、箱をあけたら、むぎは、長い尻尾をまげて
箱とおなじ、体全体がハートの形になったまま、固まっていました。

むぎが教えてくれたこと

スナネズミは2年半ぐらいが寿命だともいわれています。でもむぎは、買ってきたときすでに大人で、そこから3年と少し生きました。

むぎと過ごした3年間のあいだに、とても辛いことがあり、大きな病気にもなって、病気は治ったものの、結婚適齢期と人から呼ばれる年齢で髪の毛がすべて抜けてしまい、周囲が婚活に勤しむ中、自分はまっとうに生きていくのはもうダメだと勝手に思い込んでいました。

仕事は続けられましたが、友達が結婚や仕事で活躍していく横で、自分だけ取り残されたような気がして、むしろ、病気の治療に専念していたときよりもいろいろと考えるようになってしまい、とても辛く感じていました。

砂漠が原産で、一生家族仲良く暮らす習性のあるスナネズミのむぎにとって、私の家は、「幸せ」な状況ではなかったはずです。でも彼は、ただ、毎日ごはんをたべて、自分の家を器用に整えて、毎日かわることなくおやつを喜び、生ききりました。

わたしがやったことは、彼をせまい世界に閉じ込めたことだけです。

でも彼は、毎日そこで生きて、私が楽しいときも、つらいときもただ、生きていて
そして、病気が治るのをまってくれていたかのように他のネズミよりも少し長く生きて、誰にも心配をかけないで

子孫を残すこともできず、外の世界をみることもなく、死んでいったのに
むぎは誰にうらみごとをいうわけでもなく、

それどころか、最後にお花を咲かせていってしまいました。

わたしは辛い辛いと思っていましたが、支えてくれる人たちもたくさんいました。
家族も友達も、本当に心配してくれていました。

ケージの中のむぎとちがって、いつでも好きなところに行けました。

なのにわたしは、自分に欠けているものばかり、探して、生きる気力を失っていました。

「ぼくは生きたよ。生き切ったよ。」

むぎの棺の上のお花は、むぎからのそんなメッセージのような気がしました。

私が勝手に悩みをつくって、人を避けて、苦しんでいる横で、小さなネズミは、ただ、生きて、まわりに幸せしか吐き出さないで、死んでいきました。

ただ、生き切った彼には、自分にたりないところを呪う暇なんてどこにもなかったのです。

むぎのタロット

その後、占いに関するイラスト展に出展させていただけるお話があり、そのときに、むぎを題材にタロットがかけたらいいなと思って、白いスナネズミのタロットを描きました。
むぎは茶色のネズミでしたが、間違いなく天国にいっているだろう彼を天使みたいな白いネズミとして描いてカードにしました。

描いたカードのうち、愚者のカードがいちばん、むぎににているなと思います。

むぎは星になってしまいましたが、カードをつかって占うときは、
むぎが力を貸してくれている気がしています。

その生き方で、いい生き方も悪い生き方もなく、「幸せ」に必要条件もはなく、

「ただ生きていること」

そのものの幸せを見せてくれた彼と一緒に今日もカードを読ませていただいています。
彼を題材にしたタロットは、「彼がそこに生きていたこと」をずっと証明してくれる気がして、私は今日も彼のタロットで記事をかき、彼のタロットで占います。
むぎはありふれた1匹のねずみですが、私にとってはたった1匹の世界一のねずみです。

そんな「むぎ」を題材にしたこの可愛いタロットは、
あなたが今日という2度と戻らない1日を楽しく、微笑んで歩くことを手助けしてくれると私は確信しています。

ようこそ。
「むぎのタロット」へ。どうぞ、お楽しみください

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むぎのタロットの愚者のカードです


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