カップの9
基本的な解釈
満足そうな表情の男性がたくさんならんだカップの前に鎮座しています。
一見、強欲な商人のようにも見えますが、アーサー・ウェイトはこのカードに以下のような説明を加えています。
善良そうな男性が心から満足して豊富なワインを背後のカウンターに並べている。物質的にも、精神的にも、彼の未来は確約されている。
魔女の家BOOKS アーサー・ウェイト「タロット公式テキストブック」より
彼は、精神的にも物質的にも満たされた状態にあります。
ですが、各スートの9は完成までにおこる葛藤や問題をあらわします。一見問題のないこの男性の場合は何をあらわしているのでしょうか?
カップの3で、収穫物を側に置いて踊り交わす女性が描かれ、カップの10では家族の姿が描かれているように、カップというスートの本質は愛情であり、分かち合いであり、精神的な充足です。カップの9の男性は物質的にも精神的にも満たされているのですが、それを分かち合う家族や相手とは出会えていないことが彼が「完成の途上」であることをあらわしています。
ですが、このカードは決して男性の「孤独」を揶揄しているものではありません。
「上機嫌でいること」が「大人の最上のマナーである」としばしば言われますが、「自分が幸せで満たされていること」が実は「他の人と幸せをわかちあう」ためにとても大切なことなのです。そのため、このカードは「他人との幸せな絆」を築いていくためには「誰かに幸せにしてもらうこと」を目指すのではなく、自分自身が幸せであることがまず大切なことも寓意しているといえるのではないかとおもいます。
正位置
正位置では、満足や充足といったこのカードのキーワードが中庸にはたらいていると解釈します。
物質的、精神的に満たされて幸福な状態が約束されています。今考えていることは、満足のいく形で実現されていくことになるでしょう。そしてその満足感を他の人とわかちあっていくことが達成した後のあなたの課題になっていきそうです。
逆位置
逆位置のこのカードに対して、アーサー・ウェイトは「真実、忠実さ。自由。または別の解釈として過ち。不完全」と表現しています。これはどういうことでしょうか?
逆位置では満足や充足といったこのカードのキーワードが過剰や不足にはたらくと考えます。「過ち、不完全」というのは「満足」や「充足」の不足と解釈すればいいでしょう。では「真実。忠実さ、自由」とはどう考えればいいのでしょうか?
ここでウェイトが述べている「真実、忠実さ、自由」とは、「物質的な豊かさではない真実の豊かさ」を意味するのではないかと思われます。
このカードは言ってみれば「物質的な豊かさが精神的な豊かさをもたらしている」、逆にいうなら「物質的な豊かさがなければ精神的な豊かさは存在しない」ということを表しているともいえます。確かに、物質的な豊かさは精神的な豊かさをもたらすでしょうが、それは必要十分条件とは言えないのではないでしょうか。
逆位置のカップの9は物質的な豊かさからの執着から自由になり、真実の豊かさに気づくことの可能性も示唆してくれているカードといえるのではないかとおもいます。
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